天皇陛下の心臓手術をした心臓外科医の天野先生のこれまでの半生を書いた本です。 いくつかの重要な意思決定の話が出てきますが、この先生がこだわっていたのは、シンプルに手術の数だそうです。年間に何百回という数をこなすと言うことを具体的に自分の中で決めていたとおっしゃっています。外科医が手術が上手になるには、場数が大事だとおっしゃっています。 医者でも転職することはありますが、やはり転職して思ったように行かないこともあったようでした。民間の病院からある横浜市の大学病院に転職した時に、この転職先では周辺住民の平均年齢が若いこともあり、手術数がすごく落ちたのだそうです。転職して思ったのと違うと行って見てから気づくのは、医者も他の仕事も同じなのですね。当たり前なのでしょうが、新鮮でした。 そこで、手術が多く行える順天堂大学病院にもう一度転職したのだそうです。 人から求められるものを一生懸命やるというのが、職業の基本だと思うのですが、やはりそれだけではなく、自分はどういう方向に進んでいきたいのかというものを常に持っているというのも大事だと言うことだと思います。 お客さん(雇い主)はよく見ています。特に、お金を出して人を使う場合には、その人がその仕事がちゃんと出来るか、ちゃんとやってくれるかをシビアに見ていると思います。 なので、自分では得意だと思っていることでは認めてもらえずに、お金を払ってもらえる仕事と、自分がやりたい仕事が違ってしまうという事はよくあります。自分の事はどうしても甘く見てしまうので、逆に客観的に見れていません。他人の方が自分の事を客観的に見ているというのは、結構、岡目八目という通りで真実なのでしょう。 それで、よく自分が好きな事をやるより、自分が得意なこと(しかも自分がそう思っているわけではなくて、他人がそう評価していること)をやるべきだという事が、よく言われます。 きっとそうなのでしょうが、10年単位の長期間の関心を持ち続けて、技を磨いていくためには、やはり他人の視線だけではなくて、「自分はこの方向に進みたい」という自分の意思を持ち続けることも重要なのだと私は思います。 それに、「天才!」などの本にもありますが、10,000時間の法則などと言うのもあります。10,000時間続ければ、最初は下手で人に評価されなくても、誰でもすごいレベルに到達できるのです。
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「この講義の目的は、みなさんの現在の日々の生活においても、将来的に大人になって社会人になった後においても、交渉事にぶち当たったとき、なにか、よりよき選択ができるように、相手方の主張、それに対する自らの主張を掛け値なしにやりとりできるように、究極の問題例を挙げつつ、シュミレーションしようとしたことにあります。」(帯紙より) まだ全部読んでないのですが、読み応えがあります。意思決定に関しての最近の研究成果であるダニエル・コールマンの選択の話も出てきます。意思決定にはバイアスがあり、簡単な算数程度の確率が絡んだ判断でも不利な意思決定を、頭のいい人でもしてしまうことがよくわかります。 私たちも、日々色々な意思決定を迫られるじゃないですか?その中には小さいものもあれば大きいものもあります。小さい意思決定も大事だと思うのですが、大きいのは大事です。例えば、就職するときとか、結婚するとき、マイホームの購入を決断する時、転職するとき、会社を辞めて独立するとき。こういう時に正しい意思決定をすることができるか、それがその後の人生に大きな影響を及ぼします。 小さな自営業でも、大きな(小さな)事務所の引越しをするかどうか、新しい事業分野に進出するかどうか、事業をあえて大きくしないのか、それとも人を採用して大きくしていく方向でやっていくのか、色々な選択の場面があり、色々な結論がありえます。 私の中で最近の選択は、あらたな資格試験に時間やお金を集中するか、それともシステム開発にするかというものです。海外に事務所を出してみたいというのもあります。どれも会計事務所としてはシナジー効果があると思います。税理士の仕事は税金の仕事ですが、法律が密接に絡みます。資格試験は法律の試験ですが、結構、近接分野です。相当に時間がかかりますし、試験に受からないという可能性は沢山あります。 システム開発も、今の仕事と相乗効果がありそうです。比較的新しい分野ですので、どういう風にメリットになりうるのかやって見ないとわからないという不確実な部分もあります。 この選択の根底には、仕事は何のためにするのか、という問いがあります。仕事は生活費を稼ぐべきもので、個人が家庭を守るために食えればいいのか、お金が稼げればいいという考え方もあります。このほうが、仕事に変な個人の趣味を持ち込まないので、正しいく良い仕事ができそうです。独りよがりにもならなそうですし。 それとも、仕事に個人の趣味や生き方を持ち込むか。食うだけにとどまらず、仕事に何らかの自分の価値観や好みという数字だけでは判断できない要素を取り入れてしまうか。仕事なんて、所詮は人生の一部分にすぎないと考えると、食えるようになったら、あとは何をしてもいいのだから、逆に自分のやりたいことを加味してみるというのも全然ありになります。 でも大きな意思決定は、特にのちのちの人生にも本当に影響しちゃうので難しいですよね。 この本は読みごたえがあります。色々な実在の登場人物が出てきて、戦前の歴史に興味が出てきます。
大型の資格を取ろうとすると時間がかかります。当たり前ですが、色々な事を犠牲にしないと最終ゴールまで到達できません。 人によって違うとは思いますが、会計士や税理士を目指そうとすると3000時間以上はかかるイメージなのではないでしょうか。私の場合は、24歳から勉強し始めて、合格したのは28歳の時でした。働きながら勉強していましたが、働く以外の時間は随分勉強していたように思います。 こう考えると、24歳から28歳の間の4年間の自由な時間の大部分を勉強に費やしていたわけですが、これが良かったといえるのかどうか、随分失ったものも大きかったように思います。 例えば、最近はどっちつかずで、司法試験の勉強をしたり、プログラミングをしたりしています。どちらも非常に時間がかかります。司法試験は言わずもがなで、本気で合格レベルに達しようと思ったら、やはり5000時間以上の時間が必要のようです。これは、自分の仕事(会計事務所)をしながらやろうとすると、5年はゆうにかかる勉強時間といえます。下手すると6-7年使ってしまうかもしれません。 プログラミングの方も同じです。ちゃんと測ってこなかったので、正確な時間はわかりませんが、会計事務所として独立してから、同時並行で10年くらいはやっていますから、平均して毎日1-2時間はやっているとしても、3000-4000時間くらいはすでに使っているかも知れません。うーん。改めて振り返ってみるといい意味でも悪い意味でも恐ろしい数字です。 英語も、就職してから転職してからもずっとやっていましたから、5000時間くらいはやったように思います。 考えてみれば当然ですが、この時間を他の事に使うことも出来たわけです。趣味に使えたかもしれないし、家族に使うことも出来たかもしれません。世の中のもっと役に立つことに使えたかもしれません。 仕事を食べる為に必要な事と考えるなら、仕事に人生のすべての時間を使う必要はありません。必要最低限でいいはずです。でも、仕事を自己実現と考えると、他の事に支障がない範囲なら、別にいくら時間を使ってもいいと言えるのかも知れません。 まあ、この辺は人それぞれの考え方の問題なので、何が正解というのは人によって違うとは思います。それでも、今、独立して食べていけるのですから、犠牲にしたものも大きかったかも知れませんが、良かったといえるのかも知れません。 つまり、資格はわかりやすい目標でそれなりにリターンもあるとは思うのですが、なんせ何千時間という膨大ながかかります。これは、大きな時間のかたまりなので、一つのそれなりに大きな目標が達成できる時間です。その犠牲を考慮せずに資格の勉強をしてしまうと、自分の人生を随分無駄に使ってしまうことになりかねないので、自分の生きたい方向とよくすり合わせて考えることが必要かなと思うところです。
専門分野で資格を持っているということはありがたいことです。資格を持って仕事をしている人は、普段はそれが当たり前になっていると思うので、そういう事に普段はあまり気が至りません。でも、自分で仕事を何かしようとすると、人に信用してもらうということがとても大事になるのです。 仕事をお願いするということは、お金を払って何か大事なことを他人を信頼して託するということです。専門職である弁護士や医者の例をみるとわかりやすいと思うのですが、自分にはよくわからない理解できない専門的なことを、この人はちゃんとやってくれるだろうと、こちらが想像するからお願いするわけです。 専門的なサービスだけではなく、車や家などの「もの」でも同じです。トヨタや日産というブランドや、建築士や工務店として長くやってきているという信頼があるから大きなお金を払えるのです。これが信用がなかったら、こんな大きなお金を怖くてとても払えません。 この人に信用してもらえるということがすごい事なのです。 そういう意味で税理士という資格は大変にありがたいものです。税務の分野に関しては少なくとも多少なりとも普通の人よりは知っていると人に信用してもらえます。 独立して13年が経ちますが、その間に税務以外にも他に色々なことをやりたいと思いました。でも人に信用して任せてもらえるというのは、簡単なことではありません。システムをいくつか作ってきましたが、人に信用してお金をいただけるようになるまでには、長い長い道のりがあります。ましてや、会計システムの場合は大事なデータを預けるわけですから、こちらの本気度を信用してもらわないと、全然使ってもらえません。 これは、自営業に限ったことではありません。就職・転職する場合でも同じでしょう。簿記や税理士科目の合格というのは、その人がそれなりの努力をしてきて、それなりの力あることの証明になっています。他人は面接だけで、その人の人となりや実力なんて測りきれるわけがないのです。どうしても、学歴や資格を考慮せざるを得ないと思います。学歴も良い大学を出ていれば、それなりに頭も良くて理解力がある人だと思ってもらえます。 こういうシグナリング効果を自分で創出するのは、何年もの時間と実際の努力と実績が必要です。これを実際にやるのは、とても大変です。資格や学歴は既存のものなので、そこに達してさえしまえば、人はそれなりに信用してくれます。 そう考えると資格や学歴って効率のいいすごい投資のように思います。一般論ですけど。。
仕事のホームページを作るためにPhotoshopを使ってみる事にしました。とは言っても使い方はまるでわからないので、今、本を買って勉強しているところです。 それなりのホームページをきれいに作るには結構時間がかかります。Photoshopやイラストレーターなどのソフトの使い方をおぼえる時間まで含めると、粗削りの簡単なものでも30時間から50時間くらいはかかるのでは無いでしょうか。 それでもプロの作るものにはきれいさやセンスでは到底及びません。ホームページを作るためにソフトの使い方から始めるのは、もう、仕事としてやると言うよりは、趣味になってしまっていると言われてしまうレベルです。それよりは仕事を50時間多くこなした方が、いいと言う考え方もあると思います。 でも、人にお願いするとホームページはなかなか思った様なものを作るのが難しいのです。数回くらい細い修正をお願いして、そのうち、イメージとはちょっと違うけど、これ以上手をかけると悪いから、「まっいっか」となってしまいます。 デザインやビジュアルには、文書にはない訴求力があります。文章ではうまく伝わらないコンセプトを直感的に伝えてくれることがあります。言い方を変えると、ホームページのデザインを考える上ということは、自分の仕事は何かということを改めて考え直して形にしなおしている作業だと言うことも出来ると思います。つまり、自分の強みは何か、自分はこの仕事で世の中に何を提供しようとしているのかを改めて考えて、他人にわかるように説明しようとしているわけです。 私の場合は、キレイに整頓された帳簿は整理整頓されてキレイに掃除された部屋のように、ビジネスを効率的にするし、やっている人間を幸せにしていると思っているので、そういう帳簿を提供するサービスをしていきたいと思っています。 ですので、ホームページでは、これを上手くビジュアルでわかるように出していく必要があります。(どこまで上手くできるかは別なのですが。。。)そうすると、ホームページで、どんなイラストや写真を用いるか、どこを強調するかなどが決まります。 そう考えると、デザインすると言う事も、自分の考えをまとめて外にわかりやすく表現していくという意味で、文章を書くのと同じ事なので、それなりに正当化できるのかなと思いました。
ブログを書こうとすると、頭の普段とは違うところを使うような気がします。日常生活では、どちらかと言うと外部の刺激に対して反応するような、いわば受け身の頭の使い方をしていることが多いと思うのですが、ブログを書こうとすると頭の中から何かをひねり出さなくては書けないというか、何というか。。結構、積極的に自分の頭を使うような気がします。自分と格闘して考えをまとめて文字にしていくことは大変なのですが、そこが、ブログを書くことの一つの面白さだと感じています。 そんな理由で、仕事でもブログを書くと、自分の考えがまとまるという大きなメリットがあります。逆を言うとそこを見せることが、オウンドメディアで自分を出して宣伝することのポイントでもあります。 人は誰かと話をする時に、相手が何をしゃべるか、どのような考え方を持っているか、意識的にも無意識的にも色々とジャッジしています。それはブログを読む時も同じで、書く側もそれを意識して書く必要があります。「何を」書いているか、もあるのですが、「どのように」書いているか、どんな語彙を用いているか、語調はきついのかやさしいのか、色々なところを無意識のうちに感じています。 友達関係や恋愛関係、色々な信頼関係がその人の行動や言葉をみて形成されていくように、仕事での信頼関係もその人の振る舞いや言葉をみて形成される部分があるように思います。仕事の人間関係で一番重要なのは、もちろん、どのような仕事をするか(もしくは、したか)というような実績とか仕事の内容の部分であると思うのですが、その人となりは、少なからず長期的な人間関係に影響を与えるように思います。 そういう意味で、ブログは文章ですから、書いているとその人の考え方や性格が色々とにじみ出てしまいます。ブログはその人を判断する情報が文章のそこかしこに埋まっています。毎日書いているブログだったりすると、隠そうとしても隠しきれるものではありません。プロの専門職を探している人は、仕事を依頼する前にその人のブログをチェックして、その方との相性を判断するのもいいと思います。逆をいうと、プロの専門職はブログを書いて自分を宣伝するのはいいと思うのですが、自分の個性や考え方を出すことの良さの他に、お行儀よく振る舞う(behaveする)ことも大事だなと思います。 毎日暑いですね。
開業税理士なら誰でも陥りがちな戦略ミスがあります。その一つは、個人の税理士事務所で必要以上に大きくしてしまうということです。税理士事務所は大手もしくは中堅を除いて大きくしすぎない方がいいのです。 独立したての時は、いつか自分の事務所を10人規模にしてやろうとか、30人くらいまでならいけるかなとか、結構目標を高く掲げるのが普通の人だと思います。目標を高く掲げるのは、自分の目線が高いということでもあるし、目標が高めの方が自分に負荷がかかるので、独立後の成長が速くなり、良いことではあると思います。 問題は、税理士業の場合、もしかしたら弁護士などの他の士業も同じような性質があると思うのですが、スケールすることによるメリットが、よくよく考えると「利用する側」から見てあまりないのです。税理士は一人一人お客様に対して、個別の状況を見て、サービスを提供します。つまりお客様も税理士を選ぶ際に、この税理士はどういうところが強いのかなど、いろいろ個性を見て選んでいるということです。一人一人の税理士が見れる件数には限界があるため、お客様の数が増えるとその分だけ人数を増やしていく必要があります。 ここがスケールしようとしている当人からは結構見落としがちな所なのですが、人数が増えていくと、それに伴い、事務所の個性が減っていきます。良い意味での偏りがなくなっていくのです。 税理士も、たくさんの競合相手がいる市場で競争しています。特徴とか売りがないと価格競争に巻き込まれてしまいます。価格競争に巻き込まれると、忙しいばかりで儲からないという状況に陥ってしまいます。 スタッフが増えると、その人達のお給料を稼がなくてはいけなくなるので、仕事を見つけて来なくてはならなくなります。10人分のお給料というのは、かなりの重圧です。本人が無意識だったとしても、やはり仕事をとって来なくてはというプレッシャーになっている事が多いと思います。 本来は自分の増えた仕事を手伝ってもらって楽にするために人を増やしたのに、逆にその人達の仕事を維持するために、特に尖っていない普通の仕事を受けるという悪循環になってしまいます。例えば、値段がそれほど良くなくても、帳簿の出来があまり良くない仕事も断りきれずに受けてしまったりした経験は皆さんはないでしょうか。 私の事務所の例ですが、最近まで結構何でも来る仕事は受けてきました。そしてその仕事をきちんと回すために人を増やしてきました。それで、この数年は忙しすぎて週末もずっと仕事をしていたり、手が回りきらなかったりで自分が苦しい状況になって苦しい状況になっていました。ミスもありました。 根本の所には、事業は成長しなくてはいけない、事務所を拡大しなくてはいけないという自分の中で一つの思い込みが原因になっていたと思います。 この問題の一つの解答ですが、誰もが考える100メートル走(例えがわかりづらければ、ピアノやバイオリンとか人気のある楽器)で一番を目指すのではなくて、あくまで、自分にとって勝ち目のある、例えば400メートルハードル走(この場合は、ボンゴとか?失礼!)のような他の種目に重点をピボットして(これを見つけるのが一番大変で、目を皿のようにして世の中や身の回りを見ていなくてはならないと思うのですが)、自分の向き不向を活かした利益率の高い仕事を適正サイズでやるのが良いのではないかと思いました。
税理士と言う税務・会計のプロフェッショナルにとって、仕事の分野はとても多くある。記帳代行もあれば、給与計算もある。相続や不動産に特化した人もいれば、国際税務や語学を活かした分野に進んだ人もいる。 陸上選手が、100メートル走だけでなく、400メートルハードルという選択肢があるように、税理士にとっても生き残る道は沢山ある。 100メートル走はとても競争の激しいところで、ほとんどの人が努力だけで日の当たる場所に出られることはない。どんなに毎日努力しても、ほとんどの場合ダメなものはだめだ。持って生まれた肉体的な能力があまりに違う場合、努力だけではいかんともしがたいことがあるのだ。 その場合に、人は自分を責めてしまったりすることが往々にしてあるが、自分の努力不足が原因ではないことが、もっと言えば、努力してもどうにもならないことが世の中には多いのだ。 私は、このようなスポーツや芸術のような華麗な才能が苛烈な競争をする世界と違い、ビジネスの世界ではほとんどの事は、努力で何とかなると思っています。でも、無理なゲームは早めに見切ってやめないと、仕事で人生に疲れてしまいます。 その最たるものが、高い家賃と人件費でしょうか。そしてそれらを賄うための給与計算や記帳代行の仕事は、自分を苦しくするだけです。もし仕事を拡大しようとしてそのようなループに入ってしまったら、周りの人に迷惑をかけないように状況を見ながら徐々に撤退していくとしても、早くそう言うループからは抜けなくてはいけないと思います。 では、自分が幸せに働くことのできる分野をどのように見つけるか。やはり、周囲を良く観察しながら、人が少ない専門性のあるところかニッチな所に生きるのが良いのでしょうか。100メートル競走ではなく、400メートルハードルを選択するように。
小規模企業で人を採用すると、誰もが給料の支払い方に悩みます。いったいお給料とはどのように決めるのが正しいのでしょうか?何か、とりあえずこの法則に従っておけば大きくは外さないというような、経営学の教科書にかいてあるような、セオリーのようなものはあるのでしょうか。 もらう側も、自分のお給料がいつも十分であると感じていると言うことは少ないと思います。自分はこんなに働いているのに何でお給料がこれしかないんだろうと思うことは良くあります。私も勤めているときによくありました。給料が上がるか下がるかは交渉のやり方によるところが多いんじゃないかなーとか想像しちゃったりして、なにか公平に決まっていないんじゃないかと思っていました。もしくは、上手く交渉すればお給料は上がるんじゃないかなとか。 払う側はどう思っているかというと、やはり給料の金額についてはいつも悩んで(?)いると思います。悩むと言うと大げさですが、やはり、この人に対する給料は高すぎるのではなかろうかとか、安すぎると思っていないかなとか、色々思案してしまうところではあります。 給料は安すぎるのは良くないのは事実です。そもそもビジネスの社会では他人同士の関係が前提です。お互いにメリットを提供しあえなければ成り立ちません。お給料が安ければ安いほど良いというのは、自己中心的で子供っぽい考え方です。安ければ安いほど良いというのは、相手の犠牲のもとに自分が得をしようという考え方ですから、長続きしないのは言うまでもありません。 逆もまたしかりで、もらう側から見てお給料が高ければ高ければ良いというのも長続きしません。払う側のメリットがなければ長続きしないからです。 そして、雇用と言うのは不思議なもので、簡単に代替できる経営資源ではありません。長く働いてくれればくれるほど、かゆい所に手が届くようになってきます。売り上げなどのように数値では簡単に測定できないけれども貢献してくれている部分が増えてきます。 また、働く側も長く働けば職場環境にも慣れるし、持ち運びが可能でないそれぞれの職場や会社固有のお客様のくせや仕事のやり方などの個別の場に属する情報もわかってきます。なので長く働くほど、コツもわかって効率も上がります。 つまり、上手く状況をマッチさせてお互いがメリットになるように給与システムをデザインして、長く働けるようにすることがお互いのメリットになるのです。 採用するときにその人の能力を面接だけで見極めるのは、普通は無理なので最初から高い給料をつけることはリスクが高いです。しかし、最初に提示する給料が低いと応募自体が少ないか、自己評価の低い人しか来なくなってしまいます。 つまり、募集時に提示する給与は世間並みにしておいて(これは求人誌や求人サイトを見るとわかります。)、あとは、出来るだけインセンティブの部分を大きくするのが良いと思います。インセンティブの部分を大きくすれば、自動的に給与が低すぎることも、高すぎることも調整できるし、一定の基準で全員にそれを適用すれば、不公平な感じも無くなると思います。
決算業務をマニュアル化できるかどうかということは、税理士業務をマニュアル化出来るかどうかと言う問いでもあります。一口に税理士と言っても、もちろん本当に色々な方がいて千差万別な仕事をしているので、とてもではありませんが税理士業務のすべてをマニュアル化出来るものではありません。 それでも、例えば私の事務所の主力業務である小粒法人クライアントの記帳と決算業務をマニュアル化できるかといえば、ある程度は出来るのではないかと思います。 マニュアル化できると何が嬉しいかと言うと、仕事の質をきちんと一定のレベルでキープすることが出来ます。マニュアルがないと毎回、口で説明するのですが、これだと、説明したことを本人がきちんとノートに取ってくれれば良いのですが、説明のどの部分をノートに取るかと言うことは、まったく本人任せになってしまいます。これだとどこが重要かの判断が本人の主観的な判断になってしまうので、危険です。 仕事は結構細かいところまで正確性が要求されますが、マニュアルに書いてあると、それぞれ個々人が一々上司に細かいことまで聞かなくて良くなるので、本人にとっても仕事がやりやすくなると思います。 私たちの事務所には英語がネイティブのスタッフが2名いますが、この方たちはUSCPAを持っていたりして、会計についてはそれなりに十分な知識を持っています。なので、費用にするか固定資産にするかの判断や、評価損の計上を検討すべき場面なのかは十分に理解していると思います。むしろ、最近の会計の流れについては私よりよっぽど詳しいかも知れません(汗)。。また、英語がネイティブのクライアントだったら、意思の疎通もスムーズなので、私が直接やるよりよっぽど良かったりします。 それでも、それで十分かというとそうではありません。日本のお客様にプロの税務・会計サービスを提供している以上、日本の税法の知識は欠かせません。 こう言うときに、マニュアルやチェックリストが役に立つのです。知らないと漏れやすい項目をちゃんと網羅して、事前にチェックしてくれます。仕事のレベルを一定レベルにキープしてくれるのです。ちなみに私共の決算用のチェックリストは4ページあります。会計について1ページ、消費税が約1ページ、法人税関係で約2ページあります。これ以上あると、ちょっと多すぎで無駄な項目が増えてしまうように思います。 私の事務所だけでなく、このブログを読んでくださる税理士の方や士業の方、独立して少人数でビジネスを回している方で、スタッフに毎回同じような初歩的な質問をされてイライラしてしまったりする人は、もしかしたらマニュアルがないことを(もしくはマニュアルが十分でないことを)疑うべきかもしれません。 私は、マニュアルの整備で事務所の仕事の質が随分安定したなと思ったので、きっと皆様にも使えるのではないかと思います。もうやってる方がほとんどかも知れませんが、そうでない場合はお勧めです。最初に作る時は時間がかかりますが、小さく初めて徐々に、内容を加えて改良していけば、心理的なハードルもそれほど大きくはないと思います。 他方で、たとえUSCPAを持っていたとしても、日本の税法ががわからないと有効なアドバイスができにくいというのもあります。法人税における役員賞与の規定や、過小資本税制における利子の損金不算入の規定など、会計の知識だけではやはり物足りない。決算をやりつつ内容を確認して、税務的なアドバイスを提供するようなことはちょっと出来ないでしょう。