決算業務をマニュアル化できるかどうかということは、税理士業務をマニュアル化出来るかどうかと言う問いでもあります。一口に税理士と言っても、もちろん本当に色々な方がいて千差万別な仕事をしているので、とてもではありませんが税理士業務のすべてをマニュアル化出来るものではありません。
それでも、例えば私の事務所の主力業務である小粒法人クライアントの記帳と決算業務をマニュアル化できるかといえば、ある程度は出来るのではないかと思います。
マニュアル化できると何が嬉しいかと言うと、仕事の質をきちんと一定のレベルでキープすることが出来ます。マニュアルがないと毎回、口で説明するのですが、これだと、説明したことを本人がきちんとノートに取ってくれれば良いのですが、説明のどの部分をノートに取るかと言うことは、まったく本人任せになってしまいます。これだとどこが重要かの判断が本人の主観的な判断になってしまうので、危険です。
仕事は結構細かいところまで正確性が要求されますが、マニュアルに書いてあると、それぞれ個々人が一々上司に細かいことまで聞かなくて良くなるので、本人にとっても仕事がやりやすくなると思います。
私たちの事務所には英語がネイティブのスタッフが2名いますが、この方たちはUSCPAを持っていたりして、会計についてはそれなりに十分な知識を持っています。なので、費用にするか固定資産にするかの判断や、評価損の計上を検討すべき場面なのかは十分に理解していると思います。むしろ、最近の会計の流れについては私よりよっぽど詳しいかも知れません(汗)。。また、英語がネイティブのクライアントだったら、意思の疎通もスムーズなので、私が直接やるよりよっぽど良かったりします。
それでも、それで十分かというとそうではありません。日本のお客様にプロの税務・会計サービスを提供している以上、日本の税法の知識は欠かせません。
こう言うときに、マニュアルやチェックリストが役に立つのです。知らないと漏れやすい項目をちゃんと網羅して、事前にチェックしてくれます。仕事のレベルを一定レベルにキープしてくれるのです。ちなみに私共の決算用のチェックリストは4ページあります。会計について1ページ、消費税が約1ページ、法人税関係で約2ページあります。これ以上あると、ちょっと多すぎで無駄な項目が増えてしまうように思います。
私の事務所だけでなく、このブログを読んでくださる税理士の方や士業の方、独立して少人数でビジネスを回している方で、スタッフに毎回同じような初歩的な質問をされてイライラしてしまったりする人は、もしかしたらマニュアルがないことを(もしくはマニュアルが十分でないことを)疑うべきかもしれません。
私は、マニュアルの整備で事務所の仕事の質が随分安定したなと思ったので、きっと皆様にも使えるのではないかと思います。もうやってる方がほとんどかも知れませんが、そうでない場合はお勧めです。最初に作る時は時間がかかりますが、小さく初めて徐々に、内容を加えて改良していけば、心理的なハードルもそれほど大きくはないと思います。
他方で、たとえUSCPAを持っていたとしても、日本の税法ががわからないと有効なアドバイスができにくいというのもあります。法人税における役員賞与の規定や、過小資本税制における利子の損金不算入の規定など、会計の知識だけではやはり物足りない。決算をやりつつ内容を確認して、税務的なアドバイスを提供するようなことはちょっと出来ないでしょう。