エンジェル税制は、個人がベンチャー企業に出資した場合、1000万円まで(上限は40%)を所得から差し引くことのできるという、すごい制度です。投資した金額がそのまま所得控除になるので、例えるならベンチャー投資という投資をしながら、100%損金に算入できるようなものです。 この制度のすごいところは、投資のリターンが100投資して100だったとしても、つまりチャラだったとしても、30の利益が出てしまう所です。 具体的に説明すると、投資した株式を売却した際には、合計で約20%の所得税と住民税がかかります。税率50%の高税率層の人が、投資した金額と同じで将来売却できたとしたら、投資した時は約50%の税金が節約できて、売った時に20%支払いますので、これだけでも差引き30%の税金を得しています。 税率の高い人には素晴らしい制度ですが、エンジェル税制を利用する上で一番の問題点は良い投資先を見つけるのが難しいという事です。良い投資先はそう簡単には見つかりません。自分でこの会社は良い会社だと思っても、大概の場合は失敗します。ベンチャー投資は1000に3つと言われるように不確実性の高い分野です。例え、投資の期待値が全体ではプラスだったとしても、成功確率が1000分の3では、個人にはとてもではないけど、リスクが高すぎます。 このリスクを分散するためにファンド的なもの(投資事業有限責任組合)を通して投資することもまま見られるように思います。
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節税のために保険会社の営業マンから保険商品を勧められる事がよくありますが、必ずしも正解ではありません。節税で勧められる保険商品は、今払った分を経費にして法人税を減らしつつ、将来解約返戻金を受け取るというものです。 解約返戻金は大体80%と90%の間くらいであることが多いです。簡単な計算だけでも保険は損なのですが、実質返戻率などのちょっと変わった言葉が出てくるので、多くの人が誤解してしまいます。単純に考えても、払い込んだ保険料と解約返戻金の差額が保険会社の取り分で、解約返戻金には法人税がかかるので、手残りは少なくなるのです。 ライトグリーンの部分が実際に手元に残る利益ですが、一見して保険を払わない場合の方が多いことがわかります。 毎年100万円の保険料を7年払ったところで解約したとしたしましょう。解約返戻率は85%として計算します。返戻金には法人税が23%かかります。 7年後のキャッシュフローでは、結局少なくなっていることがわかります。
春になってきました。無事に確定申告の忙しい時期を終えることが出来てホッとしています。 税務調査で仕掛品の未計上を質問されました。あるコンサルティングのプロジェクトで売り上げが上がっていないのに、コンサルタントの給与が仕掛品として資産に計上されず、費用に上がっていることを言われたのです。 では、この場合に必ず仕掛品に計上をしなくてはいけないのでしょうか。 基本通達を見ると以下の様になっています。 2-2-9 設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額は、当該報酬の額を益金の額に算入する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が継続してこれらの技術役務の提供のために要する費用のうち次に掲げるものの額をその支出の日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加) (1) 固定費(作業量の増減にかかわらず変化しない費用をいう。)の性質を有する費用 (2) 変動費(作業量に応じて増減する費用をいう。)の性質を有する費用のうち一般管理費に類するものでその額が多額でないもの及び相手方から収受する仕度金、着手金等(2-1-12の(注)の適用があるものに限る。)に係るもの なかなか寛容な規定ではあり、また、企業会計の実務に考慮した規定です。一般の事業会社では製造業でもやっていない限り製造原価報告書を作りません。したがって、未完成のプロジェクトの分の人件費を集計しないことが多いです。ですので、このような指摘(?)をされることが多いと思います。 税法は、税法や施行令などの法律で決まっていない限りは、企業会計のルールに従います。これは法人税法22条にも書いてあります。売上の基準は実現主義、費用は発生主義で計上するのです。あらためて、なぜ通常の企業会計ではサービス業で仕掛品を計上しないことが多いのか考えてみました。 私は長年、税務をやっていて、会計学の基本的な部分がちょっと曖昧になってしまいました。税務をやっていると、税法の規定にばかり目がいってしまい、そもそも論の会計が曖昧になってしまっていたのです。 結論としては、やはり社員の給与は固定費的なものなので、直接原価的な考え方よりは、期間費用であるという考え方が背後にあるのではないかと思いました。 ですので、税務調査でそのようなことを指摘された場合には、法人税法22条に立ち返り、企業会計ではどうなっているのか、また、その際には基本通達2-2-9をよく読んで、その射程がどうなっているのかを検討して、税務調査官の方にその旨を伝えて検討してもらうのが良いように思います。
適格株式移転について相談 株式移転は、既存の会社Aが新設で親会社Bをつくり、Aの株主はBに持ち株を移転する代わりに、Bの株式を取得すると言うものです。 お客さんから相談があり、現在非常に上手く行っている会社(仮に甲社)の株式を適格株式移転して持ち株会社をつくり、その持ち株会社の傘下で別の新しい会社(乙社)を作って、そこで新しい事業を始めたいとの事でした。 適格株式移転と言う言葉がお客さんから先に出てきたので、ちょっとときめいたのですが、目的からひも解くと、要はポイントは二つ。現在利益が出ている甲社の資金を新しい事業に使いたい。ただし、資金を出すときに報酬や配当などの形で税金がかかるようにならない様にして欲しい。また、現在の会社と別のメンバーと一緒にやりたいので既存の会社と別の株式を持つことでモチベーションを高めたいとのことでした。 目的がわかれば、株式移転を使ってわざわざ会社を2つ作る必要があるかどうかは、他の目的も考えておのずと明らかになってきます。別に、親会社を作って、甲社と乙社を持たせる必要はなく、甲社から株主への貸付金でも十分目的は果たせるかも知れません。 確かに合併や会社分割、株式移転・株式交換などの単語はかっこよくもあり、惹かれるものもあるのですが、これに飛びつくことなく、実質を良く考えた方が良い場合の方が多いでしょう。 節税では奇抜な事よりも基本的なことの方が重要 先日、節税の相談をされて失敗してしまったのですが、節税の方法には一般にウルトラCはありません。課税される所得が魔法のようにぱっと消えてしまうことはないのです。それよりは、地道にそのお客様の置かれている状況や財務諸表をもう一度確認することが早道です。 そのお客様は退職金を払う状況にあるかもしれません。PCなど古くなった細かい備品を買い換える必要があるかもしれません。また、財務諸表を丹念にみると、滞留している不良債権があるかも知れません。これらが税法上で貸倒処理できるかを丁寧に見る方が、結局は変なリスクをお客様に負わせることなく、十分に節税をすることができることが多いです。 もちろん、ちょっと以前に可能だった太陽光発電装置を買ったり、海外の不動産を買ったりするなどの大技を検討する必要がある場合もあると思うのですが、そういうリスクが伴うことをするよりは、もっと先に出来る基本的な事があるでしょうという事です。 そして、そういう基本的な事項は社内の事なのでお客様の方がよく知っています。そういう状況を上手く引き出して聞かせてもらい、その中で出来る事を探すのが王道だなと改めて思った次第です。反省。
認可保育園の消費税は免税になります。では、認可「外」保育園の消費税はどうでしょうか。 答えは、非課税になります。国税庁のホームページには、以下のようにあります。 「都道府県知事の認可を受けていない保育施設(以下「認可外保育施設」といいます。)のうち、一定の基準(認可外保育施設指導監督基準)を満たすもので都道府県知事等からその基準を満たす旨の証明書の交付を受けた施設及び幼稚園併設型認可外保育施設の利用料については、児童福祉法の規定に基づく認可を受けて設置された保育所(以下「保育所」といいます。)の保育料と同様に非課税とされます。」 国税庁HP 次に法人税ですが、これも一般社団法人を設立して、非課税になりうります。一般社団法人は株式会社とことなり、非営利型の組織運営が出来ます。その場合、通常の収益事業には法人税がかかるのですが、収益事業と非収益事業にわけて、非収益事業には法人税が課されません。 国税庁のHPにも、認可外保育園でも法人税が非課税となる旨の以下のような記載があります。 「その認可外保育施設が証明施設であり、監督基準に従って運営されている場合には、照会者の見解どおりで(収益事業に該当しないとして取り扱って)差し支えありません。」 国税庁HP 一般社団法人は、株式会社や合同会社と同様に通常の事業も行えるので、認可外保育をやるのであれば一般社団法人の形式を考えておくのも損がないとは思います。
The tax law about director salary is simple, although it may look otherwise. The law says that only fixed amount of director salary is deductible from taxable corporate income. It does not mean that you cannot change/raise your salary during a fiscal year but it only means that the raised salary will not count as … Read More “Director salary cannot be raised in the middle of a fiscal year (Corporate Tax Law)” »
本日は予定納税の減額について。 個人で所得税を納めている方は、年に2回、7月と11月に予定納税が発生します。1回目の予定納税の期限は、7月の末日です。昨年に比べて今年の業績が悪い場合には、この予定納税を減額申請することができます。申請期限は7/15日です。昨年の業績が良すぎて、予定納税が多額に出る場合はこの制度は助かります。法人でいうところの、中間納付を実際額でやるようなものでしょうか。 予定納税については審査がありますが、ある程度理由がしっかりしていて、提出できる資料があれば、大概の場合は認められます。心配はほぼご無用。今年のキャッシュフローがきつい場合は、遠慮せずに出してみてはいかがでしょうか。振替納税にしている方も7/15日までに出せば、7/31の引き落としについては間に合うようです。とても迅速に処理されますね。 ****************************************************** 昨日は、中学校時代の古い友人に会いました。それで、彼と四谷の三栄通りにある、しのぶという牛タンの専門店に行ってきました。うっかりしてて、写真を撮ってくるのを忘れてしまったのですが、美味しかったー。特に、ゆでたん、タンシチュー、焼きタンは厚みが1センチくらいあるものがそれぞれクセなく調理されていました。ゆでたんとタンシチューはとても柔らかく、焼きタンはそれなりに歯ごたえがありました。 彼は、海外でものを製造して日本に輸入する産業にいるのですが、この円高で今まで赤字だったのが、黒字になったと言ってました。本業での努力を上回るほど為替の影響は大きいようです。今回のBrexitによる為替変動の大きさはそれほどのものだったんですね。 彼もなぜか、私と同じようにダイエットを始めてて、それに早起きでランニングをしてました。しかも起きるのは4時とか!二人とも今年で49歳、お互いに同じようなことを始めているので笑ってしまいました。健康に気をつかい自分の体をメンテナンスしなくてはいけない年齢になっているということですね。
少し古い話になりますが、国税庁が出す法人税の基本通達で絵画などの美術品に関する取り扱いが変わりました。以前は、絵画は20万円を超えるものについては、非減価償却資産として扱われ、原則として減価償却費の計上は認められていませんでした。 https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/bijutsuhin_FAQ/index.htm#q1 それが、H27年1月以降の取得は、100万円が基準となりました。つまり、100万円未満であれば、減価償却の対象となり、8年で償却ができることになりました。 美術品は素人がギャラリーで買っても、高く買わされてしまいます。もちろん、個人の趣味で買う分にはいいのですが、次に同じ値段で売れることはまずないでしょう。しかし、絵画のオークションで買えば、値段はプロも参加する客観的なものなので、次回に出品する時も同じくらいの値段で売ることができるかも知れません。 よく言われることのようなのですが、100万円以下の絵は美術品として(希少性が低く?)あまり価値がないので、結局は売れないというものです。私どものお客様であるオークション会社に伺ったのですが、ピカソやシャガールの版画なんかは100万円でも十分に買えて、売るときもまあ売れるんではないかとの事でした。 毎年、100万円の絵を1枚ずつ買っていけば、8年間で800万円のBSに載らない内部留保ができます。2枚ずつ買えば1600万円です。節税をしつつ内部留保を厚くしてしていくのに、保険に負けず劣らずの、かつ、オフィスに飾って楽しめる良い節税方法なのではないかと思います。
3月決算の会社ですと、1月くらいから決算予測を始めます。この調子で行くと、売上がこれくらい、費用がこれくらいになるなので、利益がこれくらいになるだろう、というやつです。 利益が出ていると多額の税金を払わなくてはいけなくなるので、多くの会社が決算準備をします。私が知っている範囲で代表的はものは以下のような感じです。その他にも、私が知らないだけで細かくは色々あるのでしょうが、節税対策はどの会社にとっても関心事項なので、結局はどこの会社も(どこの税理士も)やっていることは似たり寄ったりのように思います。 ただ、お客様の話を聞くと前の税理士はこんなこともしてれくれたとか、こんなこともOKと言ってくれたとか、強烈な話を聞くことがあります。まあ、それは例外的な税理士であったり、お客さんが我々にプレッシャーをかけようとしてる意図があるものとして、はなし100分の1くらいで聞いています。 <効果の細かいもの> 消耗品などの必要なもの、プリンターのトナーとか、古くなったPCを新しくまとめて買っておくなど。消耗品は買いすぎると、貯蔵品として否認を受けることになります。トナー50万円分とかはやめた方が良いでしょう。 <大きいもの> 家賃の1年前払い: 結構大きいと思います。家賃30万円の会社なら360万円、100万円の会社なら1,200万円利益が先送りされます。注意すべき点として、毎期定期的にやる必要がありますので、1年払いなら翌年も、半年払いなら半年ごとに定期的に家賃を支払う必要があります。これは、なかなかいいですよ。私もやってます。事務所の家賃はどうせ払わなくてはいけないので。デメリットは先払いしすぎて、転居のタイミングが縛られることぐらいですか。 生命保険の前払: 昔は払ったときに支払額の100%が費用になって、後で90%くらいが返ってくる、利益の先送り保険がありました。でも今は、50%損金が限度です。また、解約して保険返戻金が返ってきたときに所得にカウントされるため結局は法人税がかかります。実質返戻率が100%を超えるなんて保険の説明書に書いてありますが、信じたらだめです。返って来る時には法人税がかかるので、支払う保険料の10-20%を保険会社に払うだけの納税の先送りです。しかも、日本の実効税率は最初の800万円までは、25%に満たないので、浮いた法人税が保険料になっているだけです。 セーフティー共済: (昔の倒産防止共済)毎月の掛金が20万円まで、損金になります。1年分を一括前払いしてすべて損金にすることが出来ます。40か月継続すると、解約しても100%のお金が戻ってきますが、これも解約すると返ってきたお金が全部益金になります。これは、結構いいです。私のお客様でもやっているところは多いです。 旅費日当: 内容が微妙なので今度書きます。基本は、会社で旅費規定を作り、それに則って精算し、実費清算はやめます。 ソーラーパネル: これもH27年3月くらいまでは十分に意味のある対策でした。が、今後は電力会社の買い取り価格も下がってくるので、節税以前に金融商品として、ちゃんとリターンが十分な金融商品であるかどうかを吟味した方がいいと思います。これは、最少単位が2500万円くらいからのようなので、私のお客様にはほとんどいません。 決算期の変更: これは結構、大技です。何回も出来るものではありません。何回もやると、同族会社の行為計算否認されちゃうかも知れません。 簡易課税の選択: 効果は大きいのですが、一度やると2年は戻せないので、よくよく吟味が必要です。逆に効果がすごすぎるので、税理士は良くこれで訴えられています。期限を過ぎると、後からは出来なくなり、事前の届出が必要です。私もこれでよくひやっとします。 <逆にこれをやったらアウトです> 現金販売での、売上の除外。仕入の除外。 売上のタイミングをずらす。 取引先に言って売上げや経費のタイミングを変えてもらう 個人の経費を突っ込む 消費税の免税事業者となる資本金1000万円未満の会社を2年のおきに作る 税務調査が来る会社は結構決まっていて、利益が出ている会社か、消費税の還付が大きい会社(300万くらい?)です。税務署の方はあまり言いませんが、やっぱり調査の結果税金が増えないとダメなんでしょう。