皆さんの会社はデューデリジェンス(以下、DD)を受けたことがありますか?あの何か会計士や弁護士みたいな人がやってきて、会社の社長や幹部の人たちと会議室かなんかににこもってこそこそ何か調べているやつです。 DDは大概の場合、会社に誰かがお金を入れようとしているか、買収しようとしている場合に発生します。買収する側はその会社が財務諸表の通りの会社なのか、中を見て確認する必要があるからです。 会計士の側は監査の癖がついているので、なんとか隠れてる(かもしれない)粗を探そうとします。それは職業的な役割分担なので仕方がないところでもあるのですが、それだと上手く行かないことも多いように感じます。DDでは相手方の協力が必要だからです。 DDを受ける側が必ずしも会社を売りたいとか資金を受けたいとか思っていない場合もあります。創業者が自分が育ててきた会社を高く売る様な恵まれているケースなら良いのですが、事業が思うようにいかず不本意ながら自社の株式を手放す場合も往々にあります。 そんな心情がある場面で粗さがし目線を感じさせるような物言いで、あれは間違い、これもダメ!見たいな雰囲気を作ってしまうと、打ち明けようと思っていた秘密も言う気が無くなってしまうでしょう。 DDは事業を存続させて将来のお互いのメリットのためにやるのですから、そのような雰囲気は作らないように配慮したいものです。 (白馬トレイルラン)
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事業承継をする際に一つのネックになるのが株式の承継です。会社の価値が高いほど一般に株価の評価も高くなるため相続税が高くなります。生前に株を贈与する場合には贈与税がかかりますが、この場合も株価の評価が高ければ贈与税がかかります。 株価を下げる方法は大きく分けると2つあります。一つは株価の評価方法自体を変えてしまう方法です。一般的に株価の評価は定額譲渡や贈与の問題を避けるために、相続税の評価方法を使うことが多いです。相続税の評価方法では会社の規模で計算方法が純資産方式と類似業種比準価額方式があります。 会社は規模によって評価方法が変わる。 評価対象の会社の規模によって評価方式がかわり、小会社は純資産方式、中会社以上は純資産方式と類似業種批准価額方式の加重平均になります。一般に類似業種批准価額方式の方が評価が低くなるので、小会社に属する場合は、中会社になるように、あまり儲からなくても取引量を増やしたり、借入をして資産規模を増やしたりするのが有効な方法になります。 会社を二つ以上もっている場合には、単純にそれらを合併すると会社の大きさが大きくなるので、上手く行けば会社の規模の等級が上がります。例えばそうすることで小会社から中会社に等級が上がれば、類似業種比準価額方式が使えるので簡単に評価が下がります。例えば小売・サービス業の規模の等級は以下の通りです。類似業種比準価額方式を使うには、人数が5人を超えるようにするか、総資産が4000万円を超えればいいわけです。従業員3人の会社を2つもっているのなら、2社を合併することにより中会社の小という等級に出来るので、100%純資産方式の評価に較べて評価を安くすることが出来るのです。 <小売・サービス業> 総資産価額と従業員数 取引金額 判定 10億円以上かつ50人超 20億円以上 大会社 7億円以上かつ50人超 12億円以上20億円未満 中会社の大 4億円以上かつ30人超 6億円以上12億円未満 中会社の中 4,000万円以上かつ5人超 6,000万円以上6億円未満 中会社の小 4,000万円未満又は5人以下 6,000万円未満 小会社 その他に総資産を増やすことも出来ます。総資産を増やす方法には色々ありますが、借入をして不動産や在庫を増やすのも一法です。借り入れをして不動産を増やすのはリスクのある行為ですが、不動産自体が収益を生む場合もありますし、不動産を購入することをそもそも考えている場合に、個人名義ではなく会社名義で購入することも検討したらいいと思います。 次回は、純資産や利益、配当などの財務要素を通した株価引き下げの方法を考えてみたいと思います。
お客様に聞かれている事例ですが、今までは、中古車のトレーディングをしていた会社ですが、しばらく活動を休止していて繰越欠損金が相当溜まってしまいました。 この会社を使って民泊事業を始める事にしたのですが、新たに出資を募り、元の株主と新たに参加する出資者2人の合計3人で3等分ずつ持つような会社にしました。(事実と異なるように少しアレンジしていますが大枠は変えていません。) この会社は繰越欠損金を使えるでしょうか? http://tadashiisetsuzei.com/article/300992557.html ここに色々書いてありますが、ざっくりとまとめると繰越欠損金の使用制限がかかるのは、(A)特定支配関係が始まって以降に、(B)特定事由に該当する事実が発生した場合です。 そして特定支配関係(A)とは「一つの法人もしくは一人の個人が、繰越欠損金を持っている会社の50%超」を取得した場合です。これを書いている時点では、法人税法施行令113条の2に規定されています。 特定事由(B)とは主に、以下の通りです。他にもいくつかありますが、これがメインです。 (1)休眠会社が復活して事業を始めた場合、 (2)他の事業をしていた会社がその事業を廃止して、もしくは廃止することが予想されていて、かつ、新たに別の事業を始めて、今までの事業規模の大体5倍超の借入金または出資を行うことです。 今回の質問の回答は、持ち分が3分の1ずつですから(A)の特定支配関係が発生しないので、持っていた繰越欠損金は使えるという結果で良さそうです。以前に誰か専門家の意見を聴いていたからこういう形式になったのか、それともたまたまだったのかはわかりませんが、よく出来ています。つまり、欠損金を抱えた休眠会社を持っていたのですが、自分だけではなく、誰か他のメンバーを2人連れてきて新しい商売を始めています。他のメンバーにとっては、事業の3分の1を取得するという、新たに事業を始めるに近い大きな出来事だったのですが、休眠会社の過去の欠損金を結果的に利用することが出来ています。 半分以上を取得していないので、コントロールを獲得していませんから、ギリギリ制度の意図する射程範囲には入らないようになっていると言えるのではないかと思います。なるほど、繰越欠損金の活かし方も掘り下げると深いものがありますね。。