「キャリアとか仕事を通した自己実現なんて、そんな重要なものではない」と考えた方が気が楽です。世の中のほとんどの人は、生活のために働いています。仕事を通して自己実現をするとか言うというのは、もしそういう事が起こったら「儲けもん」くらいの感覚で考えた方が良いのでしょう。現実の世の中には、それ程、知識や技能の必要無いアルバイトやパート的な仕事についている方が沢山いて、そのこと自体を否定する理由は何もないと思うからです。
他方で、私はもう少しで50歳になります。社会に出てきて25年くらいが過ぎました。まだ30歳くらいの人には信じられないかも知れませんが、25年くらいはあっと言う間です。そんな中で、今までやって来た決断で、良かったことが3つあります。
1つ目は、高校生の時に交換留学でブラジルに行った事、2つ目は、最初に就職した会社を辞めて会計士試験を受けた事。3つ目は、会社を辞めて税理士事務所として独立したことです。
どれも、それなりに苦労が多い事でした。高校生でまったく言葉のわからない国に1年間留学したというのは、今考えてみるとよくやったなと思います。大人になった今に思うとその無謀さと言うか若さと言うか、自分の子供がもし同じことをやるって言い出したらきっと尊敬してしまいます。だってポルトガル語なんてまったく知らなかったし、英語だった中学英語に毛が生えた程度で全然できないレベルだったんですから。
それでも、何が良かったかというと、外国の文化にアレルギーがなくなりました。もっと言うと外国語は出来るようになると自分の中でわかったことでした。私の通っていた高校は埼玉県の北にある田舎の高校で、外国なんて海の向こうの遥か彼方の事でした。ちょっと何かをカタカナで言うと外国かぶれと後ろ指さされてしまうような環境でした。今思うと、古すぎて閉鎖的すぎて信じられません。
1年間留学してホームステイをしたことにより、ポルトガル語を夢の中でもしゃべっている様になりました。英語も少し出来る様になりました。世界中からの留学生が交換留学で一緒に来ていたのですが、一緒にくだらない事で盛り上がっているうちに世界がグーンと広がりました。今の事務所を国際事務所と名前を付けているのも、実際はそれほど難しい事はやっていないのですが、この時の経験が活きています。
会計士試験も税理士事務所として独立するのもそれなりに努力が必要ですし、犠牲も多いものではあります。でもやってよかったと思っています。
ここで共通するのは、この3つは全部自分で選んでやったという事です。自分で選んだという事は、少しの苦労があっても自分の事として前向きに頑張れるのです。もう一つは、自分に負荷のかかり、一定の期間の継続的な努力が必要だったと言う事です。自分で選んだことだから継続的な努力を続けることが出来たのでしょうし、その継続的な努力によって得た知識は、全てなくたとえ一部であったとしても今の仕事にも生きています。簿記とか会社法とか。
何十年単位で自分の人生を振り返ってみても、これらの事は挑戦してみて良かったなと思うのです。ですから、もしこれから自分がやりたいことが出てきて、それがリスクを伴うし大変なことだったとしてもやったと方が良いのではないかと思うのです。