日産の西川社長の継続に対して、アメリカの議決権行使助言会社大手が反対を推奨したそうですね。先日のFCA(フィアットクライスラー)とルノーの合併の話が流れた件と言い色々世間を騒がせています。今後の展開は一体どうなってしまうのでしょうか?基本的に争いごとは、勝っても負けても当事者にはマイナスな事が多いので、日産と言う会社の業績にとっていい影響はなさそうです。
=======================================================================
今回は一般社団法人を利用した節税スキームの話です。
一般社団法人は、昔から相続税逃れスキームの検討対象になってきました。例えば、一般社団法人に贈与もしくは設立時に財産を拠出することにより、その法人の建物を無償で使わせてもらう、実態以上の報酬を受け取るなどの方法により、間接的に資産を継承できますが、一般社団法人には株式のような持ち分の概念が無いので、相続財産にはカウントされず、相続税を回避することができてしまいます。
つまり、資産を拠出した後、その法人を一族が継続して実効支配できてさえいれば未来永劫相続税を払う必要なく財産を継承できでしまうのです。
どこぞの美術館とか言いませんが、一代で成功した起業家の美術館とか地方に行くとけっこうあったりするじゃないですか。あれは、文化交流とか芸術振興が目的になっているはずなので、非営利徹底型になっていて、現金や美術品、美術館に必要な土地や建物全部、法人の側で課税が生じずに拠出出来ていると思います。別に必ずしも租税回避の目的でやっている訳ではないと思いますが、親族や子供など次の世代がその法人の運営を引き継ぎ、給与を受けたり様々な経済的便益を引き継ぐ場合もあるので、その場合には結果的に相続税を回避できてしまっているかも知れません。
このような相続税回避の方策を防ぐため、相続税法66条4項というのが出来ました。66条4項は、相続税を回避する目的でする遺贈・贈与を受けた持ち分の無い法人(一般社団法人や社会福祉法人、学校法人など)に、実際にメリットをうける個人に代わって贈与税を課する制度です。つまり、租税回避目的と認められる場合には、間接的に便宜を享受する個人に贈与税はかかりませんが、その法人を通じて間接的に贈与があったと認められるような場合には、その法人に相続税をかけることとなりました。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640609/03.htm
しかし、今度は別の問題が持ち上がりました。一度この66条4項の適用を甘んじて受けてしまえば、その後は未来永劫、家族が支配する法人を承継していくことができるので、一度税金を払ってでも2次相続、3次相続では、相続税を回避することができるのです。
これを防ぐために今度は、理事の過半数が同族の場合に、相続の発生時に相続税を課するという制度が出来ました。相続税法66条の2という規定です。同族理事が過半数を占める一般社団法人(特定一般社団法人等)に相続税を課税することとなりました。課税は同族理事が死亡した時で、一般社団法人の純資産を同族理事の数で割った金額が相続財産となります。
相続直前に同族支配でなくするという租税回避に対応するため、過去5年という縛りがあります。相続開始の過去5年以内に同族理事の割合が半分を超えている期間がトータルで3年を超えている場合には、特定一般社団法人等に該当することとなっています。また、相続直前に理事を辞任するという相続回避に対応するため、相続開始の5年以内に理事がなくなっても相続税の対象となっています。
しかし、この規定も色々と抜け穴が指摘されてます。判定は理事の数で判定されていますが、理事を選任する立場であるところの社員の数にはには現在のところ条件が付いていません。同族社員が過半数であるなら理事の選任は自由にできることになりそうですが、制限はありません。
また、相続5年以上前に理事が交代していれば適用は無いので、死亡より5年前に計画的に、➡子➡孫➡ひ孫と継承させていけば、この規定の適用による2次、3次、4次における相続税課税は回避できそうではあります。
==================================================
<編集後記>
最近、明石順平弁護士の著書で「国家の統計破壊」という本を読んでいます。政治家にとっての選挙の重要性と、自民党政権が成果を強調するアベノミクスの効果(実質賃金やGDPなど)が実は統計を操作した嘘であったと書かれています。現在の景気に関する事実がどうなのか興味深くもあり、また日本の経済運営や経済統計の作成過程について勉強にもなります。