ちょっと極端な例だけど、税務用の会計じゃダメな場合があるんですよ。 税務だけ見た会計は、税金が一番安くなるように作ります。当たり前ですけど。そうすると、使えない会計データが出来上がります。 例えばですが、節税のために還付返戻金のある生命保険にはいったり、1年分の家賃を前払いをすることはよくあります。この時、生命保険の会計処理は、税務では全額損金(税務上の所得から控除する事)に出来るものは全額費用処理して、半額損金のものは半分資産計上、半分を費用処理します。前払い家賃も、費用処理するのが損金に出来る条件なので、通常、翌期分も費用計上してしまいます。 半額まで損金にできるから、半額損金で半額資産計上って何なの!と言う話です。保険を解約したら実際に返ってくる金額ともうまったく無関係です。 家賃などのサービス内容が同じで毎月出ていく費用も同じなら、短期前払費用と言って、1年分まで前払いしても税金の計算上は払った時の費用にすることが出来ます。ただし条件があって、会社で費用処理してることです。例えば私の事務所の家賃が45万円だったとすると、540万円決算月に払って、費用処理しておけば税金の計算上も540万円は今年の経費になるっていう事です。 でもそうすると、もう今年に実際いくら利益が出ているのかとかもう、わからなくなってしまうわけですよ。本当は、家賃は前払いしてたって、それは資産計上して、その月にはその月の分のだけ経費にしないと、正しい利益なんて見えっこないですよね。 財務諸表を税務申告のためだけに作っているのならこれでいいのですが、DDなんかをやる場合は、買い手に正しい状況を伝えるために修正仕訳が必要です。 経営者本人だって、経営のためには正しい数字が必要です。 事務所で提供する試算表には、こういう税務のために歪んだ数字を修正した試算表を提供してみようと思ったりしました。後は、前年度やその前の年との比較ですかね。比較がないと、経営が良くなっているのか悪くなっているのか全然わからないので、KPIを使って経営するなんてのも、リアルな会計の数字とつながらないので、面白くなくなっちゃいますね。
Month: August 2018
最近、海外のお客様からDDのお話をいただきました。DDは約1年ぶりです。 DDとはデューデリジェンスの略です。会社や事業を買収する前に会社の財務諸表をチェックして、その数字が正しいかどうか、隠れた債務等がないかどうかなど確認します。 M&Aに出てくる会社は問題のある会社ばかりではありません。商品もいいし、経営が綺麗な場合も多々あります。それでも、財務諸表にお化粧している会社もあれば、粉飾に近い会社もあります。やっぱりDDは必要なのです。 DDのあとは、最適なスキームの確認です。 隠れた負債があるかも知れない場合など、既存の会社のリスクを切り離したい場合は、別会社を設立して資産買収を検討します。補助金を受けている場合や許認可等が必要な場合は、株式の取得による会社ごとの買い取りを検討します。 また、繰越欠損金がある場合は、どのような条件を満たせば繰越欠損金を買収後も使えるのか、もしくは、どのような場合に使えなくなるのかを伝えます。 買収側は海外の投資家なので、日本の税制について正しい情報を伝えることも重要です。繰越欠損金は10年繰り越すことを伝えなければなりません。また、買収側の資本金が大きい場合は、利益の半分までしか繰越欠損金が使えないことも伝えなくてはいけません。 DDはやる側にとっても緊張感のある仕事です。何かを見逃してしまうと、それはそのまま買収側の損失になってしまいます。ただ、いくら緊張感を持って真剣に仕事をすると言っても、やる気に依存するようでは、仕事の質にムラが出ます。監査と同じくやることを決めて、その合意された枠内で誠実にかつ淡々とやるべき仕事をやるような仕組みにするべきかと思います。
音声入力がどれくらい使えるものなのか、ちょっと試してみたかったので、AmazonでEcho Spotという画面付きのスマート・スピーカーを買ってみました。 実際に使ってみても、「Alexa、落語聞かせて」とか、「Alexa、ボサノバかけて」と言うと、ちゃんと理解してくれて、注文した音楽をかけてくれるので、すごいなと思いました。 これを会計事務所で何かに使えないかと思い、ちょっとプログラミングを試してみることにしました。 セットアップはそれなりに複雑なのですが、プログラミンの原理自体は本当に簡単です。 「{salary}の社会保険料を教えて。」と言うような文章を手でうち込めば、後はAmazonのサービスの一つである音声認識プログラムのAlexが、ユーザーからの文章を聞き分けて、この文章に合致する場合には、この質問に紐付けた関数を呼び出してくれるわけです。未来ですよねー。参考までに下記が、その呼び出し文(発話)の登録例です。プログラミングの構造は本当にシンプルですよね。 今は、事務所のスタッフの方の提案により、給与計算の時に使う社会保険料を口頭ですぐに答えてくれるものを作っていますが、もっと色々なものが作れそうですよね。
事務所内の業務用ウェブシステムをアマゾンのクラウド(AWS)に移しました。やって見ると、想定していなかった問題が出たりしましたが、結果としてはおおむね順調に動いているようです。 AWSは月に100ドルかかるので、一年間で13万円くらいはかかる予定です。Linuxだったら月に600円でもそれなりに動くのに、こんだけ高いのはサーバーがWindowsのものだからです。 ただ、既存のシステムがWindownsベースで走っていたので、これを一から書き直す選択肢はなかったのでしょうがないとは、思います。 もう一つ見逃せないのが、C#の生産性の高さです。PythonとDjangoや、(深くはやったことがないけど)RubyとRailsの組み合わせも金額的にはお手軽でいいのですが、C#は静的型付け言語ですので、バグが潜んでしまう可能性がPythonやRubyなんかに比べて低いです。コンパイルする際にかなりの割合で問題点を指摘してくれるので、実際に動かす際にはバグがだいぶ減ってます。 それとデータベースとの連携が、同じMicrosoftのSQL Serverを使ったEntityFrameworkと言うのがとても便利です。DjangoだとデフォルトがSqlite3なのですが、さすがにちょっとあれなので、Postgresqlなんかを使ったりしますが、もともの純正データベースではないので、カスタマイズが必要です。しかし、これに結構時間がかかったり、解決できない問題が出てきたりします(これは私の実力が足りないのもあると思いますが)。そういう調べることに使う時間コストを考えると、EntityFrameworkは最初からSQL Serverと使うことが想定されているので、相性が最高です。効率がとても良い。 C#はWindownsをサーバーにしなくてはいけないので割高ですが、プログラムをPythonなどの静的型付け言語よりよっぽど厳密なオブジェクト指向でかけるので安定性が違います。「コストが高いけど、安定性に優れている」C#はまさに実際の仕事に使うプロ用の言語と言えるのかもしれません。世の中ではJavaやC#などの厳密なオブジェクト指向言語のシェアは減ってるみたいですが、しばらくはC#で色々と開発していこうと思ってます。
昨日、とある大きな会計事務所の創業者先生のセミナーを聴いてきました。 皆さん、儲かっている会社と儲かっていない会社の違いは何ですか?ときかれました。 その先生の答えは「差別化」でした。そう、差別化が出来ていない会社は儲かっていない。確かに営業力で儲かっている会社もあるのですが、どっちがより本質的かと考えると、商品とかサービスとかその会社がお客様に提供するものがお客様に価値を提供するわけで、営業力はお客様に自分たちのサービスを知ってもらう手段なわけなのです。 その事務所では、月次の試算表とその分析を商品にしています。そのために、会計ソフトから出てくる試算表をそのまま使わず、独自のフォーマットに必ず加工してお渡ししているそうです。やっぱり儲かっている会社(この場合は会計事務所)は色々工夫していて独自性がある! 私たちも、一般的な意味での良い会計事務所であると同時に、工夫して自分たちにしか出せないような独自の強みを備えていきたいと思いました。 改めて何が自分たちの事務所の良いところかと言うと、税法や会計は前提として、 外国語が出来る、ネイティブスピーカーが複数人いる(資格保持者もいる)、 (現金主義ではない)発生主義の正しい月次決算を毎月タイムリーに提供する、整理整頓された帳簿を作成する、 ぐらいなところでしょうか。。まだまだ工夫の余地がありますね。