事業承継のやり方には色々ありますが、税務・会計の側から見るといつ誰に経営権と株式を移転するかと言う経営的な事を決めた後は、どのように税負担を少なくするか、資金負担をどうするかというのが検討される視点です。 <事業承継で納税負担を有利にするための教科書的パターン> 持ち株会社スキーム(最初から承継人のお金で設立して、借入で株式を買い取る) 資産管理会社スキーム(譲渡後の業績向上による評価益の増加分には42%減額できる)作り方には借入でやる場合と株式交換による方法がある。 一般社団法人スキーム(H30年以降は大幅に制限されそうです) 会社分割(高収益部門の分社化など) 会社合併(評価方法を類似会社に変える、低い評価方法に変える) 社長退職金と同時に株式の譲渡 優先株 グループ法人税制を使った高収益物件の後継者の会社への移転 非上場株式の株価は、上場株式のように日々取引所で決定される客観的な数字がないので、以下のような要素に働きかけることによって株価を下げます。 評価方法(従業員や資産規模、売上などによって相続税法で定められた株式の評価方法は、純資産方式と類似業種株価方式のどちらになるか、その折衷割合が異なります)。会社の規模が大きくなるほど、類似業種株価方式の割合が高くなるので、株式の評価が下がるのが一般的です。したがって、2つ以上会社を持っている場合は、両社を合併すると株式がやすくなります。 また、純資産方式と類似業種株価方式のいずれを使うにせよ、利益や純資産、配当の金額が少なければ評価も下がります。ですので、譲渡のタイミングに合わせて退職金を払って利益と純資産を減らすなどすれば、直接に株価を下げることができます。 また、少数株主には配当還元方式と言う特に低い評価方法で評価できる場合もあるので、そのような株主はいるか、誰に相続させれば配当還元方式を使えるかを検討しておきます。 この大前提を頭に入れた上で、次のような手順でどのような施策ができるかを考えて行くのです。 まず、現在の事業の株価を算定すること。 後継者を決めること。その時に「いつ」やるかも決めること。株式を後継者に集中して移転できるように計画すること。株式が分散すると、後継者は意思決定を自由にできなくなってしまう。 後継者には親族内か従業員などの内部の後継者以外に、雇用維持のため、第三者もありうる。従業員などに承継させる場合には、本人に資金力が十分でないことが多いので、その資金をどうするかが問題となる。 株式はその時期に合わせて株価の安くなるような施策を決める。株価が高い時に株式を移転すると贈与税や相続税の負担が大きくなる。 株を移転するとしても、贈与とすると将来の特別受益の減殺請求の可能性を残してしまうので、争族を避けるためにも、可能なら売買で譲渡する。 <後継者を選ぶ> 親族(子供)の場合、本人に継ぐ気があるか、能力があるか。 親族外承継(社内幹部)会社の事情に明るいので、安定感がある。問題は、資力があるかどうか。 M&A 書いてが見つかるかどうか。値段が折り合うか。 <後継者を育てる> 親族を社内で育てるのは一般的には難しいと言われているらしい(本当にそうか?)。 社外で育てる場合も会社規模が異なったり、事業内容が異なったりするのでハードルはある。 いきなり全権を移転するのは危険。一部だけを任せるなどのワンクッションをおく方が上手く行くことが多い。株についても、社長が退職する時に退職金を払って会社の株価評価を下げて、そこで移転するのが定跡。 よくあるパターンに持ち株会社方式というのがある。これは新しい会社を、子供が100万円などの手元の現金から出せる金額で設立して、この新会社で銀行から株式の買取資金を買い取り、子会社(既存の会社)の利益を配当として吸い上げ、親会社はその配当から銀行の返済をする。子会社からの配当は益金不算入になるので、法人税の2重払いは発生しません。 大事なのは、世の中には教科書的な手法がある程度決まっているので、自社の場合はどのような方法が使えるのかを検討することです。それほど難しいことではありません。次に、どのような方法でも、ある程度は陥りやすい教科書的な落とし穴のパターンがあるので、それが大丈夫かを検討しておくことです。 <教科書的な落とし穴> 配当還元方式を使える株主の範囲を間違えていないか。 特定会社(比準要素数1・土地保有特定会社・株式保有特定会社、開業後3年未満)に当たってしまう 外国会社に類似業種比準方式は使えないl 株式を移転する年度の法人税の申告は、修正されると評価が激増してしまうかのせいもあるので、慎重にやること。 これだけで、70点くらいの承継プランの大枠ができたことにはなるのではないかと思います。
Day: December 16, 2017
事業承継