どのような時に恒久的施設(PE)があると認定されるか その昔の話ですが、PEが日本にあるのではないかと税務当局より指摘があったことがありました。 私のそのお客様は日本とヨーロッパの両方に会社(それぞれJ社とE社)を持っていて、日本で機械を仕入れて、ヨーロッパのお客様に販売していました。私は当時知らなかったのですが、お客様は日本の会社の社長であるばかりでなく、ヨーロッパの会社の社長も兼ねていました。 ビジネスの仕組みはいたって簡単で、日本で購入した特殊な機械を、ヨーロッパで販売すると言うものでした。まずJ社がE社に商品を販売し、E社はそれなりのマージンを抜いて、E社のお客様に売ると言う仕組みです。 緑の線が形式上の取引の流れで、赤線が実際の物の流れです。 ここに税務調査が入りました。そこで問題になったのが、E社が何者かと言うことでした。J社とE社は名前が似ていたので、関係があるらしいことは伺い知れました。税務調査では、この会社がどんな会社であるのかが調べられました。どこに所在するのか、社員は何人くらい居るか、資本規模はどれくらいか、売り上げはどれくらいで、つまり実体はあるのか。また、E社ではどれくらいのマージンが形状されて、その先のヨーロッパのお客様に売られているのかが調べられました。 その過程で、E社は社長が保有して居る会社で、他にあまり(もしくはほどんど)ビジネスはしていないこと、従業員はいないこと、J社の社長はE社の社長でもあること、本社はとある会計事務所に登録されて居ることがわかりました。 一連の取引は仮装ではないかとの主張も当局からされましたが、E社が金融機関からJ社のための資金調達をして居ることや、J社のウェブサイトを運用して居ることから、ファナンスとマーケティングの機能は少なくともやって居るとの納税者側からの主張はなんとか認めていただく事ができました。 ただ、J社の社長がE社の恒久的施設(PE)になるのではないかとの指摘があり、これは受け入れざるを得ませんでした。 PEは、租税条約によって異なるので、外国会社の日本の拠点がPEに該当するかは、相手国によって異なる可能性があります。ただ大枠は国際的にコンセンサスが取れていて、情報収集を目的とする駐在事務所や、外国にある本社のために仕入れをするための商品倉庫などは該当しないことになっています。他方、登記の有無関わらず支店はもちろん、自社の製品やサービスを契約できる代理人もほとんどの租税条約でPEに該当することになっています。 国税局などの実際の税務調査での確認事項を見ると、実務上では、契約を締結できる権限があるかどうかの判定として、見積もりは誰が作成して居るか、契約の受注は誰が受けて居るかが重要視されて居るように思います。つまり、本社が日本に人(本社の社員ではなく、業務委託料をもらって居る場合で)が置くのは、最終的には本社の製品を日本人のお客様に売るためですが、その人が実際に見積もりを本国に依頼して作ってもらって、日本のお客様に渡して居るのか、それとも実はその人が作ってしまって居るのか、メールなどの証拠の提出を求められる事がほとんどです。 メールなどで、日本の担当者が見積もりや契約を締結していて、本社にはその報告して居るだけのようなメールが出てきてしまうと、PE認定一直線になってしまうので注意が必要です。 その他に、外国会社がインターネットを通して日本に物品を販売する場合に、日本にインターネット・サービス・プロバイダーのサーバーにホストされてイるウェブサイトを通じて、物品を販売しても、日本にPEがあるとは通常認定されません。日本で自前で場所を借りてサーバーを設置して居るような場合は、恒久的サービスがあることになります。 PEと認定された場合にどのように所得を計算するか この話は、本社のPEが日本にあるかどうかの話なので、PEの所得をどのように計算するかと言う話とは別なので注意が必要です。 PEで課税される所得は通常、そのPEに帰属する帰属主義に基づいて計算されます。つまり、外国の本社が直接にやって居る取引は、日本のPEに帰属しないので、日本での所得ではありますが、PEに納税義務は発生しないと言う事です。さっきの例でいうと、日本のPEとは別に本社が直接にインターネットサイトかなんかで販売している商品の利益はPEに帰属しないので、日本で法人税の納付は必要がないことになります。 ただし消費税については、PEの有無に関係なく納税義務が発生するので注意が必要です。
Day: May 28, 2017
国際税務