匿名組合にすると税金が安くなると不動産投資をする外国人の方たちの間で思っている方が多いようです。本当にそうなのかなと考えてみました。 ちなみに、匿名組合の分配金を非居住者に支払う時には、20パーセントの源泉所得税がかかります。それと比較して、法人税の方は、実効税率は地方税まで入れて、所得(利益)が800万までは約25パーセントです。800万円を超えると40パーセントくらいになります。 匿名組合のスキームは、商法の535条以下に規定されていますが、営業者と匿名組合員(出資者)が必要です。営業者が出資を募って、匿名組合員から出資を受けます。営業者は匿名組合員から出資を受けて、不動産などの事業に投資をして、利益が出たら分配します。 ここで注意が必要なのは、買った不動産は営業者に帰属するという事です。匿名組合員は、営業主を監視することは出来ますが、匿名組合の持つ財産を直接コントロールすることは出来ません。 また、あえて既に所有している不動産を営業主に移転すると、登録免許税や不動産取得税がかかります。これが結構高いです。 ビジネス上のリスク 匿名組合で税金が安くなるのには理由があります。匿名組合では、営業者が不動産の所有権を取得するので、匿名組合員は持っている不動産を使って匿名組合を組成するには、名義を営業者に移さなくてはならなくなります。所有権が無くなってしまうので、不動産を直接コントロールすることができなくなります。つまり、営業者が勝手に不動産を第三者に売ってしまうと、匿名組合員は不動産を取り戻せなくなってしまいます。 つまり、匿名組合員は、出資者であって営業主体ではないから、配当と同じような源泉所得税で課税関係が終わるという形になっているのだと思います。 税務で否認されるリスク そこでよくある発想は、自分で営業主の会社を作ってしまおうと言うものです。日本に小さな合同会社を作ってそれを営業主にして、そこに出資をすることを通して不動産を買おうと言うものです。 しかし、営業主と匿名組合員はお互いに無関係の別人であることが前提になっています。匿名組合員が営業主である会社を作るという事は、匿名組合員が営業者である会社の株主になっていて、匿名組合員が営業者をコントロールしてという事になると思います。 この場合、日本にある営業主であるところの会社が、匿名組合員と一体になってしまいますから、不動産を持っているのは、匿名組合員であるという事を税務当局に認定されてしまい、匿名組合員が法人なら日本における法人税、個人なら所得税がかけられてしまうリスクが相当に高いと思います。 また、営業者の会社の株は誰か第三者に持ってもらっていても、実際の投資の意思決定は、匿名組合員がやっている場合がそれなりにあると思います。例えば取締役が、匿名組合員の関係者であったりとか、意思決定が匿名組合員によってされていることがメールなどで明らかな場合は、やはり否認されると思います。 原則 匿名組合で否認されないようにすることは、原則に戻ることだと思います。つまり、出資者とは別のアセットマネージャーが不動産などを購入するファンドを組成して、そこから出資者を募ると言うものです。順番が、まず出資者がいて、営業者を何とかするのではなくて、営業者がまずいて、その会社が出資者を募るのです。 English version of explanation is available here. (私記) 昨日は子供小学校の関係の催しもので、土曜日の半日を小学校で過ごしました。竹で紙鉄砲や起き上がりこぼしなどを作って子供たちに教えるお手伝いをしたのですが、なかなか楽しかったです。 最近、再びJavaをよくさわっているのですが、Tomcatなどでエラーが出るとどこが悪いのか原因を探すのに苦労します。まだまだ、いじっている時間が不足しているのでしょう。
Month: December 2016
平成27年に法律が変わって、非居住者だけでも会社が設立出来る様になりました。 しかし、実際問題として、会社の設立には資本金の振込が必要なのですが、その振り込みをするための銀行口座開設がネックになる事が多いと思います。 にわとりと卵の関係のようなのですが、会社を作るためには、資本金の払い込みを証明するための銀行口座が既にあることが必要です。日本の法律では会社を設立する場合に、資本金の払い込みを、既存の銀行口座に振込みをして、通帳のそのページのコピーを使って証明するので、既に銀行口座がないと資本金の払い込みを証明する書類が作れないのです。 ですが、非居住者からすると、日本に銀行口座があるという事は、以前に日本に住んでいて銀行口座が残っていたなどの珍しい場合でない限り、通常は難しいと思います。また、建前論としては、居住者が非居住者になる場合には、銀行口座を閉じてくださいと言われることが多いと思います。 外国人ももちろん日本で銀行口座を開けることが出来ますが、在留カードが必要なようですので、居住者であることが前提です。 今まで日本に住んでいたことが無い本当の「ぴかぴかの」非居住者にとっては、ほとんど不可能なように思います。ネットで調べると可能っぽい事も書いてありますが、実際にやるのは相当大変なように思います。にわとりが先か卵が先かの状況のなかで、八方ふさがりの状況になってしまうのです。 そこで、代替的な案ではありますが、だれか日本にパートナーを見つけて、その方にも社員になってもらう(合同会社の社員になるには、ほんのわずかでも持ち分を持ってもらう必要があります)のが良いのではないでしょうか。日本で会社を作るのであるという事は、日本でビジネスをしようという事だと思いますので、ビジネスのどこかの時点で居住者の存在が必要になってくるとは思います。 合同会社の場合は、株式会社における株主であるところの社員は必ず持ち分を持つ必要があるので、日本の居住者が代表社員になりつつ、持ち分を持たないという事は不可能なのです。 まあ、あまり本意な解決策ではないのかも知れませんが、「合同会社の場合」、現実的なところとしてはこのくらいが落としどころなのかなとは思います。 株式会社の場合 株式会社の場合は、もっと簡単に100パーセント非居住者が株主の会社を作ることが出来ます。 設立の手続きとしては、やはり発起設立です。募集設立は、銀行もあまり経験が無いようで手続きに明るくないため、大変です。 発起設立では、株式を引き受けるのは発起人のみです。発起人には、居住者の場合は印鑑証明、非居住者の場合はサイン証明が必要です。 まずは、手伝ってもらえる居住者に1株でも持ってもらって、発起人になってもらいます。そして、この方の口座に資本金を振り込んで、資本金の払い込みの証明をすればよいのです。 株式会社ですから、取締役になるためには株主であることを必要条件ではありません。会社の設立後に、居住者である株主から、株を非居住者に譲渡すれば、非居住者が100パーセントの持ち分を持った会社の出来上がりです。 その後の重要な手続き – 消費税 会社の設立をしたら、消費税の課税事業者にするのか免税にするのかの選択が重要です。資本金が1000万円未満の場合は、選択ができます。1000万円未満のばあい、何もしないと免税になります。不動産投資のための会社を作る場合は、課税事業者になることを期末までに「選択」しないと消費税が返ってこないので、十分に気を付ける必要があります。