この方の本は、実務家の視線で今の現実が書かれていて、面白いんですよ。もともと、銀行やコンサルにいらっしゃったようなのですが、その後、三井不動産で「コレド日本橋」や「虎ノ門琴平タワー」など、数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手掛けていたようです。現在は不動産に関する仕事をご自分でやってらっしゃるようなのですが、実務家だけあって、机上の空論だけでない、実際の話が色々出てきます。
以前に「空き家問題–1000万戸の衝撃」という本を読みましたが、その時も、今日の首都圏の住宅事情の現実が色々と書いてあり、外側から不動産の広告を見ているだけではわからないことが、色々と起きていることがわかりました。
まず、本書では、バブルの時代に横浜郊外(保土ヶ谷区の方?)に一戸建てを立てた、エリートサラリーマンの方の話が出てきます。
この方は、現役の時がバブルで、当時あこがれの一戸建てに住んでいたのですが、当時1億とか1億5000万円した物件が現在は3000万円でも売れない話が出てきます。そして、こういった当時の戸建て中心の高級住宅街は、当時丘陵に建築されたことが多かったようなのですが、今そこに住んでいる住人は皆一様に高齢化してきているので、車の運転が出来なくなってくると途端に移動もなかなかままならなくなるそうです。
また、当時の平均的な家庭がこぞって買ったような、ニュータウンと呼ばれる新興住宅地の話が出てきます。いま、新興住宅地では、居住者の平均年齢があがり、少しずつと空き家が増えてきています。しかし、こういうニュータウンは都心からも遠く、駅からはバスだったりして、若い人たちはあまり入ってこないそうです。
そうして購買力の落ちたニュータウンからは、クリニックや商店が閉鎖したり、バス便が廃止になったり本数が減ったりして、段々と生活基盤が失われてきています。
こういう住宅が当時何千万、下手したら1億近い金額で取引されていたというのですから、人口増加や金融政策などの当時の状況をが今と違うことを考えても、時代は変わるという事がよくわかります。
結論
1)家は地域で買えと言うのが、筆者の結論です。が、地域の性格も10年経つと変わります。なので誰にも20年先のことはわからないと思いますが、バス便や都心まで1時間以上の不便なところはやめておいたほうが良さそうです。人口は当面減る方向というのが既定路線ですから、大きい買い物をローンで買うのは慎重なほうが良いかも知れません。
2)それとバブルには乗ってはいけない。数年間はいいのかも知れませんが、10年以上経つと世の中は変わっています。今がバブルだということは誰にも分からないとも言いますので、難しい事かも知れませんが、明らかにバブルっぽい時に、家をローンで買うのはかなり危険な行為と言えると思います。