本
著者の方がもともと大蔵省主税局に勤務されていた方で、かつ、現在、弁護士をやって租税訴訟を手掛けてらっしゃる様です。言葉使いは一部過激で、例えば出だしでは、「結論を最初に言うが、最近の国税の調査は、法に従わない無茶な課税が多い。その結果として、善良かつ誠実な納税者の納税意欲を削いでしまっている。」などと書いています。 私個人としては、そうかな?とも思います。経験から言って、確かに税務調査に来られる現場の方はそれほど個別の税法について、詳しくはなかったりしますが、税務署という組織は上がしっかりしているように見えて、結構悪くない結論に落ち着くことが多い様に思います。 書いていることは、硬派で、税法や憲法の条文や判決に基づいています。しかし、硬すぎずわかりやすい文章で書かれています。大島訴訟に言及されていますが、最高裁の考え方が、司法消極主義で、立法と行政の裁量を幅広く認め、いわば、法律で定められていればある程度どんな課税でもすることの出来る、悪い意味での法律の留保がまかり通っていると書いてあります(給与所得の定め方に実際問題として経費が認められず、納税者の平等が害されているなどの主張)。日本の税務訴訟に対する最高裁の考え方や、その向こう側にいる裁判官のコメントなども書いてあり、税理士は日々の実務の忙しさに埋没せずに、意識してこういうものを読んでおかないと、世界が狭くなり損をするなと思いました。