ある外資系のお客様の子会社が、業績の不振により解散することになりそうなのですが、この時に法人税が発生するかが結構難しかったです。
(事実を少しアレンジしていますが、)100%子会社で、赤字の補填は親会社からの借入金でやってきていました。この借入金がおよそ5億円です。
債権者が一人で親会社だけの場合、通常は、特別清算という手続きが取られることが多いようです。これは、裁判所に選任された破産管財人の主導ではなく、会社が選任する清算人主導で会社を整理することが出来るため、費用が安く済むからです。
問題は、ここからなのですが、清算を終了させるには、債権者と和解または協定書により債権を放棄してもらう必要があります。債権を放棄してもらうということは、清算している会社から見ると、債務免除益が発生します。資本金が大きい場合には、過去に多少の役員賞与などの否認項目があっても、負債の金額よりは、青色欠損金の金額が大きくなるので、所得が発生するケースは少なそうです。
しかし、資本金が少ないと、青色欠損金の金額が債務免除益より少なくなってしまうことがあるため、ここで、課税所得が発生し、事業が上手く行かないから清算するのに、なぜか清算することによって、課税が生じてしまうと言う理不尽な結果になってしまいそうです。
そこで、再生手続き等が開始していれば、過去の期限切れ欠損金が使えます。この期限切れの欠損金は、国税庁のQ&Aによると、当該事業年度における法人税申告書別表5(一)の「期首現在利益積立金額①」の「差引合計額31」欄に記載されるべき金額がマイナスである場合のその金額から、当該事業年度に損金の額に算入される青色欠損金額又は災害損失欠損金額を控除した金額となります、とあります。
(国税庁H22年度改正の質疑応答集)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/101006/pdf/08.pdf
つまり、不思議なことですが、過去に役員賞与などで損金算入を否認した金額も、解散の時は所得と相殺できることになるようです。なにか、不思議な感じもしますが、実際問題、会社に残余財産がない時は、どうせ税金をとれないと言う現実的な判断なのかも知れません。
法人が解散する場合に使える欠損金の規定は、法人税法の59条の規定で、いわゆる青色欠損金の規定である57条とは異なります。ですので、親会社の資本金が5億円以上だからと言って、80%しか繰越欠損金が使えないという事はありません。
つまり、債務免除をするのは、再生手続き等が始まってからでないと、過去に役員賞与や交際費の否認額が多額にある場合には、青色欠損金だけでは足りなくなる可能性があるので、タイミングには十分に注意する必要があるということでしょう。
やっと、疑問が解けました。
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6/13 最近、税務の知識が足りないことを痛感しています。ランニングや語学の勉強でもそうですが、毎日の積み重ねは、確実に何らかの目に見える結果につながるように思います。日々の仕事や勉強のパターンを少し変えなくてはいけないなと思いました。