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関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い(監査委員会報告第27号)

time 2016/07/10

会計士協会関連
監査委員会
関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い(監査委員会報告第27号)
昭和52年8月8日
監査委員会

1. 関係会社間の土地・設備等の売買に伴い売却益を計上した場合において、その取引自体の真実性、妥当性などの吟味は、関係会社間で行われる通常の取引、すなわち、仕入、売上の場合と実質的に異なるところはない。
しかしながら、土地・設備等は、貨幣価値の低落等によって著しく時価と隔離した帳簿価額が付されているものもあるので、利益操作に利用される場合もないではない。例えば、関係会社に土地・設備等を譲渡して利益を捻出した後、当該資産を正当な理由なく買戻したような場合は、形式上売買契約など法律上の要件が満たされた取引であっても、会計的には、固定資産について評価益の計上が行われたと同一の結果を招くことになり、妥当な処理とは認め難い。

2. したがって、関係会社間の土地・設備等の取引に関する会計処理に関しては、監査上の取扱いについて次のような点を留意すべきものと考える。

(1) 関係会社間の土地・設備等の取引について、会計上の利益が実現したかどうかの判定にあたっては、その譲渡価額に客観的な妥当性があることのほか、次の諸観点より総合的に判断してなすものとする。
① 合理的な経営計画の一環として取引がなされていること
② 買戻し条件付売買又は再売買予約付売買でないこと
③ 資産譲渡取引に関する法律的要件を備えていること
④ 譲受会社において、その資産の取得に合理性があり、かつ、その資産の運用につき、主体性があると認められること
⑤ 引渡しがなされていること、または、所有権移転の登記がなされていること
⑥ 代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収可能な債権であること
⑦ 売主が譲渡資産を引続き使用しているときは、それに合理性が認められること
(2) 関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益が実現したかどうかの判定に際し留意すべき諸点は以上のとおりであるが、買戻しがあった場合の監査上の取扱いについては、それぞれその示すところによるものとする。
① 監査対象事業年度に売却された土地・設備等が、当該事業年度中又は当該事業年度に係る監査報告書作成日までに買戻されている場合は、売買取引がなかったものとして取扱う。したがって、売却益が実現したものとして処理されている場合は、除外事項とする。
② 売買に基づく売却益を会計上実現したものとして取扱った土地・設備等について、上記①の時期以降短期間に買戻しが行われた場合の取扱い。
(イ) 正当な理由がなく買戻しが行われた場合には、売買取引がなかったものとして取扱う。
したがって、この場合の貸借対照表計上額は、売却前の帳簿価額に修正すべきものとし、損益計算書にその旨、修正した理由、当該資産の内容等を注記するものとする。当該注記が行われていない場合には、監査報告書に付記するものとする。
正当な理由がなく買戻しが行われたにもかかわらず、売却前の帳簿価額に修正が行われていないときは、当該事業年度以降の財務諸表につき、除外事項とする。
なお、ここにいう正当な理由とは、買戻し時における前記2の(1)の諸観点及び当初売買以降の諸情勢の変化等を勘案して総合的に判断し、相当の合理性が認められるものをいう。
(ロ) 正当な理由により買戻しが行われた場合であっても、買戻しが行われた旨、その理由、当該資産の内容、買戻し価額、相手方会社名等を財務諸表に注記するよう勧奨するものとする。当該注記が行われていない場合には、監査報告書に付記するものとする。
3. 関係会社間の取引に係るたな卸資産たる土地等の売却益の計上についても、この取扱いに準じて取扱うものとする。
《解 説》

Ⅰ 本報告の経緯

昭和50年末、東邦産業の粉飾決算が大阪地検に摘発されたのをきっかけに、日本公認会計士協会近畿会は、決算操作実態調査部会をつくり、上場1,500社の決算分析を進めていたが、昭和52年1月13日「昨年5月まで2年間に固定資産又は有価証券の売却で50億円以上の利益を計上した1部上場企業28社のうち15社の決算に疑問がある」との中間報告をまとめた。同部会が問題視しているのは、石油ショック以来の深刻な不況の中で、各社が土地、建物、船舶などの資産を子会社へ売り払うやりくり決算をした点。「東邦産業の土地売買がクロなら、これらの決算もクロ」という意見が強いとの報告をまとめた(読売新聞昭和52年1月14日大阪版)と報道された。そこで日本公認会計士協会会長は、「関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱いは、どのような内容のものであるべきか」について昭和52年3月28日付で監査委員会に諮問した。監査委員会は、答申をとりまとめるに当って、当協会のいくつかの機関において先議された資料を再検討した。すなわち、まず昭和45年7月会計制度委員会において、「関係会社間の取引にかかる土地・設備等の売却益の計上について」の中間答申が、「実務的には非常に難解な問題で、幾多議論の分れるところであり、当委員会のみにおいて、最終結論を出すことは性急に過ぎると考えられ、一応この答申を出発点として監査委員会および広く一般の利害関係人、有識者及び会員の意見を徴した上で協会の最終結論を導かれるよう希望します」との前文つきで報告された。次いで昭和46年7月に監査委員会において「関係会社間の取引にかかる土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い(案)」が作成されている。さらに、昭和52年3月に業種別監査研究部会・石油製品業部会・石油精製、販売会社小部会より「石油精製会社の子会社に対する固定資産の売却について」の小部会報告が行われた。しかし、これらはいまだ協会の正式な意見としては公表されていなかった。監査委員会は、これらの資料を再検討するとともに、関係会社に固定資産を売却した企業の有価証券報告書等の実態分析を行った。監査委員会は、東邦産業のような仮装取引と真正な取引との区別の基準を研究して、昭和52年6月20日付で答申し、8月8日の常務理事会で承認され、監査委員会報告第27号(以下「報告」という。)となった。なお、9月13日の理事会で、この報告が昭和52年6月末日に終了する事業年度に係る監査報告書から適用されるので、6月、7月、8月決算期の会社を担当する監査人に説明会を開催するとともに、他方、報告の文言の解釈を監査委員会で引続き検討することとされた。監査委員会は、11、12月の全体委員会に付議して検討し、12月20日開催の監査委員会正副委員長会議で解釈を最終的に確定した。以下にその解説を記載することとする。
Ⅱ 真実性吟味の基本的な考え方
関係会社間の土地・設備等の売買に伴い売却益を計上した場合において、その取引自体の真実性、妥当性などの吟味は、関係会社間で行われる通常の取引、すなわち、仕入、売上の場合と実質的に異なるところはない。メーカーが関係会社である販売会社に製品を売却しても、最終需要者に製品が売却されない限り企業集団としては、収益は実現しない。連結財務諸表を作成する場合には、販売会社に在庫するものに係るメーカーの売却益は、未実現利益として消去される。しかし、メーカーの個別財務諸表では、収益は実現したものとして計上され、配当可能利益を構成する。関係会社に対する固定資産の売却益も、連結財務諸表を作成する場合には、連結会社相互間の取引によって取得した固定資産に含まれる未実現損益は、過年度の取引に係るものも含めて消去される。しかし、個別財務諸表では、関係会社に対する固定資産売却益は、配当可能利益を構成する。関係会社に対する在庫売上や押込販売は、法形式を整えた売買であっても、会計上は、実質的な引渡の有無、売掛金の回収可能性等を吟味して会計処理の当否が判断される。関係会社間の固定資産の売買についても、同様に取引の経済的実質に基づいて判断される。法的権利義務の変動がしばしば経済的変動と符合すること及び法的形式の相違により取引を識別することが比較的容易であるため、会計上の取引を法的形式の相違から仕訳をすることが実務上広く行われていることも事実である。しかし、会計の目的が財務諸表利用者の経済的意志決定を合理的に導くことである以上、この目的に照らして法的形式よりは経済的実質が財務諸表に反映されなければならないことは当然である。したがって、法的形式によって会計処理を行うことは、それが経済的意義を適切に表わしている場合に限り認められるものであって、経済的実質から乖離し、財務諸表の利用者に誤解を与える場合には、本来の立場である経済的実質に立脚して取引を認識しなければならない。この報告は、かような観点から取りまとめられている。
Ⅲ 収益認識の判断基準
関係会社間の土地・設備等の取引の会計処理については、個別の事例に基づいて法的形式と経済的実質とを突合して判断すべきものであって、画一的な判定基準を定めることは、形式的な判断に堕する虞れがある。しかし、巷間、判断基準を明示すべきであるとの要請が強いので、この報告では、留意すべき事項を列挙している。個々の取引事例について、これらの留意事項を総合的に判断して、収益が実現したかどうかを判定するものとされている。したがって、以下に掲げる7ないし8項目は、チェックリスト的に使用されるべきものではない。
1. 譲渡価額の客観的妥当性
100%出資の子会社に対し、特定出資、又は現物出資に代えて資産を譲渡する場合は、簿価によることができるが、その他の場合、売買価額を時価よりも著しく低い価額によることは、譲渡会社の株主及び債権者の利益を害することになるから妥当とは認められない。他方、譲受会社が第三者である場合には、相当の理由がない限り時価以上で譲渡することは不可能である。相手方が関係会社である場合には、不当に高い価額で押付けることも可能であるが、譲受会社の株主及び債権者の利益を害することになる。したがって、売買価額は、関係会社間の当事者の契約により恣意的に決定することはできない。不動産鑑定士等の鑑定により客観的証拠にしたがって売買価額が決定されなければならない。譲渡価額は、代金の決済条件と関連して定められる。長期分割払いの場合には、現金払の場合よりも譲渡価額が高くなるが、受取利息相当額は、譲渡価額と区別して期間に応じて逐次収益に計上すべきであって、譲渡価額を不当に高くして収益を一時に認識すべきものではない。
2. その他の諸要件
譲渡価額に客観的妥当性がない場合は、それだけで粉飾決算と判定されるが、その他の諸要件は、総合的に勘案して仮装取引か真実な取引かを判定しなければならない。
① 合理的な経営計画の一環として取引がなされていること。
関係会社間で固定資産を売買する以上、売買の理由及び目的を第三者に納得させるだけの合理性が必要である。譲渡資産が生産活動の重要設備であれば、継続企業として売却する必然性に乏しい。しかし、異種業種や補助部門の設備であれば、譲渡する合理性のある場合もあり、また、遊休資産を処分することもあるであろう。
a)異種業種の分離独立
営業遂行上、種々の理由から会社を分割したり、合併したりすることがある。昨今、多角経営を行う企業が低成長経済に足調を合せて贅肉を落すために、人員整理を行ったり、異種業種を専業化して独立採算の責任体制を明確にする場合がある。かような場合には、特定の部門を分離独立させ、当該部門に所属する人員及び固定資産を譲渡する場合がある。なお、重要な営業譲渡・譲受を伴う場合には、商法第245条の規定による株主総会の特別決議を必要とすることに留意する。
b)補助部門の分離独立
親会社は、メーカー専業となり、販売部門、倉庫部門、配送センター、輸送部門等を分離独立させることもある。関連する固定資産は、既存の関係会社に譲渡する事例だけでなく、分離独立後の新会社に譲渡する場合もある。例えば、法人税法第51条の「特定の現物出資により取得した有価証券の圧縮記帳」の特例が適用できる場合もあるが、過去の事例では、譲渡資産に見合う資本金が巨額になる等の理由で適用されていない。
c)許認可等の関係で分離独立
許認可、特許権実施権等に関連して自己名義で営業することができないので、土地・設備等を別会社に譲渡して営業を継続させる場合がある。認許可の関連で自己の名義で営業できない場合や、二以上の外国企業から特許権等を取得すると、外国企業の要請により製造部門を分離独立させて特許権使用料の計算を明確にする場合に、必要な固定資産を別会社に譲渡して、営業を継続することがある。
d)責任体制明確化のための分離
開発段階では、多額の試験研究費や開発費を要するので、企業化するまでのコスト計算を明確にするため生産部門を分離独立させることがある。石油精製業の油槽所施設の如く、事故防止対策上、公害問題の生じやすい部門を分離独立させて責任体制の合理的な確立、又は、補償責任の合理的な確立を図るために該当設備を分離独立させて、別会社に移譲することもある。
e)遊休不動産の売却
研究所、福利厚生施設、工場跡地等のうち、老朽社宅、遊休工場等最早その儘では第三者に売却できないとき、区画整理や宅地造成を行うとか、マンションを建設するとか、これらの事業を関係会社である不動産会社に行わせるため遊休資産を一括して売却することがある。これらは、最終需要者に売却するまでの一時的売却のようにもとれるが、不動産会社が加工する場合には、相当の理由がある場合もある。
f)固定資産の管理保全の一元化
関係会社が貸ビル業を行っている場合に、本社ビルや営業所ビルの空室を効率的に賃貸するため、これらのビルを不動産会社に譲渡する場合がある。固定資産の管理及び保全を一元的に、かつ、効率的に行うため保有している固定資産を関係会社に譲渡する場合である。
② 買戻し条件付売買又は再売買予約付売買でないこと。
契約書又は覚書などに買戻しの特約を付したものは、最終的な所有権移転の意志のないものと判断される。固定資産を譲渡して売却益を計上した後、時価で買戻すと売却益相当額は、資産評価益となる。法人税の取扱いにおいても、譲渡担保は、金融取引として譲渡がなかったものとして取扱うことができる。形式上、買戻し条件付譲渡又は再売買の予約が付され、適法な取引とされているものでも、実質的に譲渡が行われるまでは収益は実現しない。
③ 資産譲渡取引に関する法律的要件を備えていること。
売買契約書や登記書類が完全に整っていること、又、国土利用計画法による届出又は認可、公取の認可等を要する場合には、その手続が完備していることなど法律要件を備えていることが必要である。
④ 譲受会社において、その資産の取得に合理性があり、かつ、その資産の運用につき、主体性があると認められること。
譲渡会社の都合によって関係会社に土地・設備等を押付けるような一方的なものであってはならない。譲受会社における事業計画に副った取得でなければならないから、当事者双方何れの立場からみても、それぞれ営利法人としての経済的効果が期待されるものでなければならない。譲受会社は、自己の意志で使用収益できなかったり、譲渡会社が引続き支配権をもっているようでは、正常な取引とは認められない。譲渡会社が第三者に売却する意図をもつにも拘らず、売却先が見当らないため一時的に関係会社に売却して利益を捻出するような取引であってはならない。
⑤ 引渡しがなされていること、または、所有権移転の登記がなされていること。
土地・設備等譲渡物件に対する支配権が完全に譲渡会社に移転していることが最も重要である。所有権移転の登記は、売買の必要不可欠の要件ではなく、第三者に対する対抗要件であるから正常な取引とみなすかどうかの考慮要件から除外してもよいとも考えられる。しかし、移転登記を行わない場合は例外であるから、原則として登記は必要である。第三者に対する固定資産の譲渡であるならば、移転登記が通常行われる筈である。ただし、老朽社宅を取りこわして分譲マンションを建設する場合、譲渡会社から需要者に直接所有権を移転する場合が例外的に存在する。
⑥ 代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収可能な債権であること。
代金回収条件の基準を画一的に決定することは困難であるが、その回収条件は社会通念に照して合理的なものでなければならない。すなわち、相当額の頭金を支払っていること、及び長期の割賦弁済としていないことなどである。代金回収条件が長期弁済となっているときは、同種の事業用資産の支払条件の慣習と対比して検討しなければならない。支払期限の約定がなかったり、分割払の金額が明確でないものは当然認められない。
一般に資産を譲渡する場合には、譲受会社の支払能力を吟味することは当然であり、第三者の場合でも信用調査などを実施する。したがって、関係会社の場合には、支配従属会社に往査を行うのであるから、第三者の場合よりも、相手方の支払能力の有無を検討する資料や証拠を入手することが可能である。回収可能な債権でなければ、真実な取引とは認められないであろう。
譲受会社に支払能力がないために、譲渡会社が譲渡代金の全部又は一部を別途に貸付け、その資金によって譲渡代金を支払わせる場合は、譲渡代金が回収されたことにはならない。未収入金を貸付金に切替えることは、妥当とは認められない。
譲受会社が銀行等から代金を決済するため、借入れを行うことがある。この場合、銀行は、譲渡会社などの関係会社に債務保証を求める慣行がある。保証債務は、確定債務と異なり債務者が完済すれば消滅するものである。譲受会社の収益力や財政状態を吟味して、銀行等との約定に伴う返済が可能であるかどうかを、監査人は検討したうえで、保証債務があってもよいかどうかを判断する。
⑦ 売主が譲渡資産を引続き使用しているときは、それに合理性が認められること。
売却即賃借で合理的と認められる場合が稀であることも事実であろう。しかし、合理的な場合が存在しないとは断定できない。この場合、当事者の一方に合理性があっても、相手方に合理性がない場合は認められない。
会社の重要な生産設備を売却して、賃借することは、賃借できなかった場合を仮定すれば、継続事業が成立しないわけであるから妥当とは認められない場合がある。しかし、異種事業を分離独立させたり、補助部門を分離独立させる場合には、生産設備が有機的一体となっている部分については、譲受会社の所有する部分を関係会社間で賃借せざるを得ない事例がある。また、循環器材のような製品包装資材を現品管理する関係会社に売却して、賃借するような事例もある。
譲渡資産を売主が賃借し、その賃借料と譲渡代金を順次相殺する場合がある。
譲渡代金の頭金も支払わないで、その全額を賃借料で相殺するような事例は合理的とは認められないであろう。
Ⅳ 買戻しがあった場合の取扱い
関係会社に土地・設備等を譲渡して利益を捻出した後、その資産を正当な理由なく買戻したような場合は、形式上売買契約など法律上の要件が満たされた取引であっても、会計的には、固定資産について評価益の計上が行われたと同一の結果を招くことになり、妥当な処理とは認め難いと報告に述べられている。売却された土地・設備等の買戻しが行われた場合の監査上の取扱いは、次のとおりである。
1. 監査報告書作成日までに買戻された場合
監査対象事業年度に売却された土地・設備が、当該事業年度中、又は当該事業年度に係る監査報告書作成日までに買戻されている場合は、売買取引がなかったものとして取り扱う。決算を修正して、財務諸表上売却益を消去しなければならない。もし、売却益が実現したものとして処理されている場合には、除外事項とする。
2. 短期間に買戻された場合
売買に基づく売却益を実現したものとして取扱った土地・設備等について、短期間に買戻された場合の取扱いは、次のとおりである。
(1) 正当な理由なく買戻された場合、当該売買取引がなかったものとして取扱う。
(2) 正当な理由により買戻された場合、買戻された旨、その理由、当該資産の内容、買戻し価額、相手方会社名等を財務諸表に注記する。注記されていない場合には、監査報告書に付記する。
短期間に買戻された場合とは、通常2年ないし3年程度の期間を意味する。企業の合理的経営計画は、短期計画でも2・3年程度であり、石油ショック等の異常時を除けば、3年程度で経営計画を根本的に変更する必要はない筈である。
正当な理由による買戻しとは、売却時においては、譲渡価額の妥当性のほか七つの観点から総合的に判断することとされているので、買戻しの場合にも、これらの諸観点から買戻しの妥当性を吟味するとともに、当初売買以降3年程度の諸情勢の変化等を勘案して総合的に判断することを意味する。相当の合理性が認められれば、正当な理由による買戻しと判定される。
短期間の買戻しの判定が最も困難であり、数年を経過していれば、売買すべき事由は、その後の諸状勢の変化を勘案すれば比較的容易に判明するであろう。
正当な理由なく買戻された場合には、次のとおり財務諸表を修正する。
① 貸借対照表計上額を売却前の帳簿価額に修正し、評価益相当額を特別損失に計上する。
② 損益計算書に、その旨、修正した理由、当該資産の内容等を注記する。その注記がない場合には、監査報告書に付記する。
正当な理由なく買戻されたにも拘らず、売却前の帳簿価額に修正されていないときは、その事業年度以降財務諸表が修正されるまで、毎期除外事項として扱う。
正当な理由なく買戻された場合、売却前の帳簿価額に修正させる取扱いは、事実上買戻しによる評価益の計上を阻止するための規定である。仮りに利益操作を行った企業が、将来、多額の利益が発生したときに、さきに譲渡した資産を買戻して評価益相当額を特別損失に計上して適正な会計処理に戻したとしても、仮装取引を行ったことを自白したことになり、社会の糾弾に耐えられないであろう。

Ⅴ たな卸資産たる土地等の取扱い
関係会社間の取引に係るたな卸資産たる土地等の売却益の計上についても、固定資産たる土地・設備等の取引に関する会計処理につき留意すべき事項についての基本的な考え方及び買戻された場合の監査上の取扱いに準じて取扱うこととされている。昭和48年頃の金融緩和時に多くの企業が、土地の投機及び不動産開発事業に着手したので、宅地又は別荘用地とすべき農地及び山林を多額に保有している。これらは、販売用不動産としてたな卸資産に計上されているが、その多くが市街化調整区域等土地開発規制を受けているので、第三者に処分できない事情にあり、関係会社間の転売が予想される。販売用不動産の関係会社間取引についても、この報告にしたがって会計処理を行うこととされている。
(担当常務理事 田口秀夫)

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